岩波書店やみすず書房から本を出していて、ちょっと気になる存在のブレイディみかこ。最近では、朝日新聞にも寄稿していた。とりあえず何か読んでみようと思い、文庫の「花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION」と新書の「労働者階級の反乱 地べたから見た英国EU離脱」、個人的な興味に近い「いまモリッシーを聴くということ」の三択で迷ったが、文庫の帯に「幻の名著!」と書いてあるのにつられ、「花の命」を選んだ。さすがに名著とまでは思わなかったが、結構「あり」な本で、彼女の書いたものの魅力も多少はわかったつもりだ。
花の命はノー・フューチャー: DELUXE EDITION (ちくま文庫)
- 作者: ブレイディみかこ
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2017/06/06
- メディア: 文庫
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著者紹介や本書から引用すると、1996年から英国のブライトンに在住。本の中にやたらと登場する「連合い」はアイルランドに住んだことがないアイルランド人で、本場の人に言わせると「似非PADDY」ということになるらしい。
英国に拠点を移した人が英国社会を俯瞰して伝えるというのはこれまでもあったが、筆者の視点は身の丈。生活者の視点で、英国の労働者階級の暮らしぶりや社会問題などを取り上げている。いやいや「取り上げる」というのも、なんかお釈迦様目線の気がする。日々の生活ぶりを書くと、そのまま社会問題を含んだリポートになっている感じである。まるで、ケン・ローチの映画の活字版だ。
米国人もそうだろうが、英国人は外国語習得が苦手だそうである。まあ、必要にせまられないので無理もないだろう。40歳の誕生日を大々的にやるというのは初耳。これまで知らなかった英国がこの本にはあった。
俄然面白いのは、やはり音楽ネタ。世代がほぼ一緒なので、ピストルズやクラッシュが話に出てくると、モリッシーの本も読んでみたい気になってきた。そして酒。あまり具体的な描写はなかったが、よく飲む人らしい。読んでいるうちに、飲み仲間のような気がしてきた。
そもそもはブログで注目された人らしい。労働者階級の話を、ちょっと乱暴な日本語で威勢良く書くところが魅力なのだろうか。これだけ書いているのだから、多少は上向きなのだろうけど、豊かとは言えない経済状態と文体がきちんとシンクロしてるのが妙に面白い。