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同じ講談社現代新書ながら別な本を買いに行ってこの本を買ってしまった。実は、宮嵜麻子「ローマ帝国の誕生」の購入を予定したのだが、(よくある話なのだが)レジに持っていったのは、この岩尾俊兵「世界は経営でできている」。「ローマ」が思ったより高か…
「不機嫌な英語たち」を書いた吉原真里さんに、日本エッセイスト・クラブ賞や河合隼雄物語賞を受賞している作品があると知って、後追いで読んだ、「親愛なるレニー レナード・バーンスタインと戦後日本の物語」。初小説となった「不機嫌」も良かったが、こち…
絵本など判型の大きな本を読む時は、ちょっと贅沢な気分になる。文庫本のように持ち歩く気になれないから家で深く座れる場所をさがし、コーヒーを湧かしたり手を汚さないお菓子を準備したり、せっかくだからと邪魔にならないような音楽をかけることもある。…
世界で一番さかんな球技はサッカー(この項では書名に従い、この後は「フットボール」で統一)だろう。世界大会の予選の規模の大きさや情報量、動く金額の大きさからそう判断してもいいはずだ。 副題なのか、タイトルに含むのかわからないが、「世界のフット…
この詩集を読んだ後に井坂洋子さんのことを調べてみたら、伊藤比呂美さんとともに女性詩をリードしてきた人だということがわかった。ハルキ文庫が比較的多く詩を扱うとは言え、詩集を文庫で出せる詩人はすでに知られた存在であることは予測できた。読んでみ…
以前、常盤新平さんの自伝的短編集「片隅の人たち」を読んで、当時の早川書房の雰囲気を垣間見たが、生島治郎さんのこの実名小説はその前日談と言えそう。「エラリー・クイーンズ・ミステリー・マガジン(EQMM)」の編集長は、創刊直前に辞めた人をカウントす…
サッカー事情となると多少詳しい気でいたのだが、スカウトの世界はまったく知らなかった。イングランドのサッカー育成網となると、日本の野球を上回っているのかもしれない。というか、日本の野球界の方は将来的な競技人口に危機感を持っているだろう。競技…
「開墾地」で芥川賞候補になったグレゴリー・ケズナジャットさんの最新作「単語帳」を読んだ。一応「本」という体裁なのだろうけど、短編1作程度の分量でまとめられている。書店で見たが文庫より小さい冊子だった(自分はKindleで読んだ)。版元は動画配信…
随分前に読んでいたのだが、まとまらないので書くのは止めていたが、別に論じるわけでもないし、きちんと理解できていないのを認めた上でそれなりに整理しようと思い、また手にとってチャレンジすることにした。著者の波戸岡景太さん(明治大教授)は「こい…
「月刊みすず」が休刊となり、1ー2月号掲載が常だった読書アンケートが単体で売られることになった。「月刊みすず」としては1部300円(+税)が、単体で800円(同)。単純比較ではえらい値上げだが、それだけの価値はあるような気がしている。冊子…
青山南さんのエッセイ。長田弘さんの弟さんで、最後に読んだのは「60歳からの外国語修行」だったか。米国では会話にも書物にもスペイン語が頻出するので、メキシコに「留学」して学んだという体験記だった。こちらはタイトルから想像できるとおり、本に関…
茨木のり子さんの「言の葉さやげ」を読んだ。茨木さんの本は割と手元にあるが、この本は言葉に関する文をまとめたもの。巻末の初出一覧を見ると、所蔵の本と被るエッセイがあったけど、そもそもこの「言の葉さやげ」として本にまとめられたものだから、こち…
ふと読んでしまったのである。読み残しや積読の小説がたくさんあるのに、立ち読みしてつい買ってしまった。大江健三郎さんが子ども向けに書いたエッセイである。「なぜ子供は学校に行かねばならないのか」「子供の戦い方」など、たぶん質問を受けたわけじゃ…
個人的に、ラテン語=教養。英語のみならず様々な言語の「素」となっているが、日本人の場合は英語を通じてラテン語に源を持つ言葉に触れるという形が一番多いのでは。その意味では、英語学習者が読んでもためになる一冊である。どちらかというと、そのよう…
奥付をみると文庫の初版が出たのが2018年12月だが、なぜか新刊文庫のように平積みされている。「サキの忘れ物」を読んでいるので、こちらが先に刊行されているのはわかっていたが、どうやらまた脚光を浴びているらしい。ドラマ化でもするのか。それは…
先日読んだ「空が青いから白をえらんだのです」の続編。奈良少年刑務所の受刑者が所内の教育プログラムで紡いだ詩を紹介している。収容者は16歳以上26歳未満の者で、少年院に比べるとずっと重い罪で服役している。殺人、強盗、レイプ、薬物、放火といっ…
別な本を買いに行ったのに、書店を出るときにはこの本を持っていた。リアル書店の良いところだ。 キャスリーン・フリン「「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室」を読んでみようと新潮文庫の棚をさぐると、同じく新刊で、寮美千子編「名前で呼ばれたこ…
数十年ぶりに友人に会うと、こちらがそれまで忘れていたことを相手がしっかりと覚えていることがある。それどころか、その相手はこちらが忘れていたことを軸に自分という人間との関係性を記憶している場合があり、(表情には出さないものの)とまどうことが…
自分の中で佐伯一麦さんの存在が大きくなってきた。何か読みたいと思って探したのがこの本。文庫化された本があまり書店になく(講談社文芸文庫は高い!)、Kindleで探した。購入したときは399円だったが、今現在は1319円になっている。ここらへんの値段設定…
学習書の一種と思ったら、小説だった。著者は、ハワイ大教授の吉原真理さん。半自伝的私小説となっている。「ふぞろいな林檎たち」のもじりのようなタイトルだが、「英語」「言語」に関わる小説だ。ある程度は「真実」と考えられるので、自分をさらけ出した…
草野心平さんが表紙で笑っている。昨年、草野心平生家や記念文学館を訪ねた自分にとっては気になる本であった。そして舞台が新宿ゴールデン街とくれば、読まないわけにはいかない。今でこそ縁遠くなったが、よく通ったところである。 金井真紀さんはテレビ番…
奈良県東吉野村で私設図書館「人文系私立図書館 Lucha Libro」を営んでいる青木海青子さんのエッセイ。奈良や和歌山に行ったことはないが、自分の故郷の東北と一緒で田舎であるけれども、イメージとしてはもっと緑が深く、神秘的な場所のような気がしている…
短歌は、「詠む」わけではなく「読む」だけ。特に詳しいわけでもないが、俵万智さんの歌集はずっと買っていると思う。と思って調べてみたら、「かぜのてのひら」(第二歌集)は未読だった。気にしてしまうと気になるのだが、お題は、今回読んだ第七歌集の「…
昨年、「六本指のゴルトベルク」を読んで、探した本。割と簡単に見つかった。「六本指」同様、音楽とミステリーを絡めたエッセイがメイン。というか、こちらが10年以上も先なので、とりあげる本は古くなるが、自身についてのことなどにも触れられている。…
横浜の人には説明不要だろう。野毛とは横浜の酒場街の一つで、昔からオヤジどもや酒飲みの「聖地」として扱われている場所。近年若者が増えてきて、「横浜西口」化が少し寂しい気もするし、逆に後継者が出てきたようなうれしさも感じている。この本は、オヤ…
仙台に寄った際に、地元の老舗書店で購入したのがこの本。江戸の風俗や当時の流行を、杉浦日向子さんのイラストとともに紹介している。文庫本なのでイラストの部分の字が小さくて読むのに苦労したが、それはこちらの問題。単純に面白かった。落語を聞く際に…
あけましておめでとうございます。 2024年の読書は、ケストナー「人生処方詩集」でスタートした。何か意味があるわけではなく、年末に読んでいて越年してしまっただけなのだ。ランニングと朝食を終えた後に、残り部分を一気に読了。ケストナーと言えば、…
静かな小説だった。日々の雑記と言ってもだろう。東日本大震災から4年経った、ある夫婦の一年。東北のある地方の歳時記のようでもある。鳥の声や紛れ込んでくる昆虫、植物、畳替えなどの一年を綴っている。見逃しているかもしれないが「震災」という言葉も…
食べもの系に弱い自分にとって、原田ひ香さんは気になる存在だった。とはいえ、著書が多くどこから手をつけて良いか分からない。古本と抱き合わせなら面白いに違いないと、本書を手に取った。タイトルから、食堂併設の古本屋の話だと思ったのだが……。 古本食…
「国境なき医師団」。1971年にフランスで発足した、医療援助団体。「国境なき~」(without borders)という惹句は何かと使い回されたりするが、やはり「医師団」がカチッとはまる。正式名称は当然フランス語で、Medecins Sans Frontieres で MFSと略され…