晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

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「森のうた」

岩城宏之さんのエッセー「指揮のおけいこ」に続き、「森のうた」を読んでみた。こちらの本は、時系列的にも出版も「指揮」よりは先。副題に「山本直純との藝大青春記」にあるとおり、東京芸術大学(本では、「藝大」と表記している)に在学している時の話を…

「本屋のあるまち/まちを耕す本屋さん」

自費出版や自費制作といった小規模流通の本を、zine と呼ぶそうだ。はっきりした定義はわからないのだが、先日のブックマーケット「本は港」でも開催記念の zine が売られていた。出店している店を紹介したものと、地元紙・神奈川新聞の書店紹介の記事を両A…

「ノスタルジックな読書」

先月下旬のブックマーケットで購入した本。著者は知らない人だが、マーケットが終了する時間が近づいていて、急いで買ったのだった。ほぼジャケ買い。何かの縁だろう。「港の人」(鎌倉の出版社の名前)で買いたかったのだが、クレジットカードが使えなかっ…

「伝説の編集者 坂本一亀とその時代」

先日、亡くなった坂本龍一さんの父が編集者だったことは知っていた。しかし、ここまでの人だったとは知らなかった。現代の日本文学史にしっかりと爪痕を残していると言えるのではないか。この評伝は、坂本龍一さんが父・一亀さんの部下だった著者に「父のこ…

「定本 蛙」

自分の中で、詩人・草野心平の存在が大きくなってきた。とっかかりは、やはり東日本大震災と原発事故なのだが、郷里の近くにもこんな人がいたんだというところから読み始めた。先月帰省した際に、草野心平生家といわき市立草野心平記念文学館に寄りたいと思…

「指揮のおけいこ」

オーケストラの指揮者の仕事って、わかるようでわからない。とはいえ、なんとなくはわかるような気もする。これまでも指揮者関係の本をいくつか読んできたが、岩城宏之さんは初めてなので手に取った。表紙も可愛らしい。 指揮のおけいこ (河出文庫) 作者:岩…

「イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ」

光文社古典新訳文庫で読んだ。自分が kindle unlimited にお金を払っているのは、この光文社古典新訳文庫のいくつかが読めることが多い。とはいえ、なかなか元をとれていない。請求がくると、ついポチッと押して読み始めたりする。この本もそんな形で出会っ…

「やんごとなき読者」

村田喜代子さんの本に紹介されていた、アラン・ベネット「やんごとなき読者」を読んだ。簡単にまとめれば、エリザベス女王が読書にはまるという話である。著者は小説も書くのだが、劇作家がメインの仕事のようである。受賞歴は本よりも舞台の方が多いようだ…

bookcafe フルハウス

原発事故で実家がなくなって「帰省」という言葉が当てはまるかどうかわからないが、親が近隣の施設にいるのだからそう呼んじゃってもいいだろう。実際、周りにはそう話しているし、故郷とは場所より気持ちの方が優先すると思っている。 今回の帰省で、機会が…

「ともだちは海のにおい」

工藤直子「ともだちは海のにおい」(絵・長新太)を引き取った。原発事故により休館していた福島県大熊町図書館が解体されることになり、昨年から図書の無償譲渡を始めた。その残りが大野駅(大熊町の駅名)においてあり、それをいただいてきたという訳だ。…

映画「丘の上の本屋さん」

タイトルからくる先入観以外は何も情報のまま映画を見た。いわゆるほっこり系な映画なのだが、鑑賞後は久々にパンフレットを購入してしまった。なんというか、余韻にひたりたくなったのだ。失礼ながら、たぶん後世に語り継がれるような作品でないだろうし、…

「統一教会」

キリスト教には関心はあるが、この本は宗教方面ではなく、社会問題の関心から手に取った。著者の櫻井義秀さんは、宗教社会学が専攻で、長くこの団体を研究してきたようだ。副題に「性・カネ・恨(ハン)から実像に迫る」とある。 自分たちの世代だと、原理研…

「音楽と生命」

3月28日に亡くなった坂本龍一さんと、「動的平衡」シリーズで知られる生物学者・福岡伸一さんの対談をまとめた本。そもそもはNHK Eテレの番組で放送された対談を加筆・編集して一冊の本になった。刊行日が亡くなった翌日の29日になっているのが、なんと…

「チャリング・クロス街84番地」

ロンドンの古書店に勤める男性と、愛書家のニューヨーク在住の女性作家の手紙による交流をメインに据えられている。1949年からおよそ20年にわたるやりとり。著者はヘレーン・ハンフで、実名で登場。副題には「書物を愛する人のための本」とある。現在…

「村田喜代子の本よみ講座」

このところ村田喜代子さんが気になる存在である。昔から存在自体は知っていたのだが、文庫化される本が増えてきたせいなのか、ちょっと身近になった気がしている。こちらが歳をとることによって、接近してきたような感覚かもしれない。九州を拠点とする作家…

「『深い河』創作日記」

「深い河」(ディープ・リバー)を読んで、もうちょっと考えを整理したいと思い、続けて読んだ。前半がそれこそ創作過程の日記。後半というか巻末が、「宗教の根本にあるもの」という対談をまとめた文章になっている。これが「深い河」で遠藤周作さんが訴え…

「深い河」

「ディープ・リバー」と読む。遠藤周作さんの後期の代表作と言っても差し支えないだろう。彼なりの、神についての一つの結論が書かれているという。若松英輔「日本人にとってキリスト教とは何か 遠藤周作『深い河』から考える」が読みたかったのだが、書店で…

「覚和歌子詩集」

まったくノーマークの本だった。駅併設の書店で見かけて、立ち読み。即購入。ジブリファンや曲を聴いたことがある方にはおなじみなのかもしれないが、自分はまったく知らなかった。「千と千尋の神隠し」は見ていないが(断片的には見ている)「崖の上のポニ…

「英語達人列伝Ⅱ」

日本における英語教育は迷走していると言っていいかと思う。英語ができる人は増えているはずだ。NHKでおなじみの杉田敏さんも、昔と比べてできる人は相当増えたと感じるとおっしゃっていた気がする。コロナ禍や円安の話は別にして、海外旅行は当たり前に…

「ダライ・ラマ六世恋愛詩集」

チベット仏教に強い興味があるわけではない。どんな詩なのだろうという疑問が先だった。じゃ、安いし薄い本だし、ちょっと読んでみようかと。ノーベル平和賞を受賞している、みんながよく知っているダライ・ラマが十四世。この詩人のダライ・ラマは六世で、…

「「普通」ってなんなのかな」

再び、自閉症について考えるために手に取った。障がいを抱えながらもオックスフォード大学院に進学したジョリー・フレミングさんの著書という形になっているが、リリック・ウィニックという人が聞き手となり、彼から聞き書きした部分が多い。 この本の特徴は…

「将棋指しの腹のうち」

先崎学九段。文筆業でも活躍している将棋棋士である。プロ棋士のエピソードや人柄などは彼の筆を通して知ることが多い。将棋界とファンの橋渡し役とも言える。先日の王将戦で藤井聡太王将に挑んで敗れた羽生善治九段について朝日新聞(読んだのはデジタル版…

「自閉スペクトラム症」

4月2日は「世界自閉症啓発デー」だそうである。この日から1週間は「発達障害啓発週間」だ。正直、自分に子どもができるまではそんなに関心がなかった。この本によると、自閉スペクトラム症と診断される人は、1970年代は1万人に1人だったのが、いま…

「悲しみの秘義」

年度末のせいか、仕事で忙しく書店に行く機会がめっきり減ってしまい、行けた時には少し長居するようになった。文春文庫の新刊を見ていると、普通の文庫とは手触りが違う本があった。素材の説明はできないのだが、いつもの指の滑りがいいのとは別で、少し指…

「やまゆり園事件」

ランキング参加中読書 読んでいて気が重くなる本だった。テーマは、2016年に施設「津久井やまゆり園」を植松聖という元職員が襲い、19人が亡くなり、26人が重軽傷を負った事件である。戦後最悪の事件と称される。気が重くなったのは、犯罪のすさまじ…

「井上陽水英訳詩集」

ランキング参加中読書 読みたいなと思っていた本が中古で手に入った。ロバート キャンベル(本の表記に従い、「・」(なかぐろ)は省く)さんの「井上陽水英訳詩集」。2019年刊行。出た時から気になっていたが、手に取ることなく時間が経ってしまった。…

「田舎医者/断食芸人/流刑地で」

ランキング参加中読書 光文社古典新訳文庫からカフカを読んだ。今回は3作目で「田舎医者/断食芸人/流刑地で」。タイトルになった3作の他、「インディアンになりたい」「突然の散歩」「ボイラーマン」「夢」「歌姫ヨゼフィーネ、またはハツカネズミ族」の…

「はじめてのクラシック音楽」

ランキング参加中読書 歳をとるにつれて、クラシック音楽を聴く割合が増えてきた。グラミー賞授賞式や音楽チャートを見て、興味をそそられてCDを購入するということはほぼなくなった。最近では、T字路sくらいか。枯れてきたとは思いたくないが、T字路sに…

「英詩のわかり方」

ランキング参加中読書 ちょっと背伸びして英詩を読んでみた。自分が普段目にする英語とはまるで違う単語が出てきて、詩自体は短いのに散文以上に辞書をひく回数が多い。Roger McGough というユーモラスな詩人の本だったのだが、そのシャレとなっている部分が…

「私が選ぶ国書刊行会の3冊」

ランキング参加中読書 紀伊国屋書店の横浜店(そごう7階)に行ったら、国書刊行会の50周年フェアをやっていた。扱っている書籍にクラシックな匂いがするものが多いので、もっと歴史のある出版社かと思っていた。僕より若いのだな。 無料の小冊子。読書ア…