晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「Rのつく月には気をつけよう」

 一昨日、たらば通信には食に関する文庫本22冊の本が紹介されていた、と書いたが、作家あたり複数の本が紹介されている項があり、正確には22人の作家の26冊が紹介されていた。「デザート」のR・ブラッドベリ「お菓子の髑髏」を含めると、23人、27冊だった。訂正する。

 昔読んだ「青春デンデケデケデケ」の芦原すなおの作品「ミミズクとオリーブ」を読んでみようかとも思ったが、ここは「初めて」にこだわることにした。たらば通信の印刷物で初めて知った作家は、石持浅海矢崎存美、西川治。西川治の「世界ぐるっとひとり旅、ひとりメシ紀行」はあまりストレートすぎるかとカット。だいわ文庫は比較的に大きな書店に行かないとない可能性がある。矢崎存美「ぶたぶたの食卓」は「ぶたぶた」シリーズが多く、はまるとやっかいなので却下。イシモチが浅い海に生息するかどうかは知らないが、先日読んだ若竹七海に通じる気がして、石持浅海「Rのつく月には気をつけよう」を読むことにした。

 大学時代からの友人である三人(男1人=長江、女2人=湯浅、熊井)が飲み会として集まるのは長江のマンション。そこにゲストが参加し、恋愛絡みのトラブルめいた話を始める。それを聞いた長江が絡まった話を解きほぐすという、典型的な安楽椅子探偵型の短編集。そして恋愛小説の一面も持つとも言えるだろうか。

 

Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)

Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)

 

 この本に関しては言えば、人が死ぬことなく、人を貶めることもないので、子どもにも安心して読ませることができるが、年齢によっては男女間の機微がよくわからないこともあるだろうし、全編にわたって酒の蘊蓄が出てくることを考えるとやはり子どもにはむかないか。

 「事件」を解き明かす段になると、熊井が、長江の名を中国の長江とかけて、「――ちょっと、揚子江」と声をあげ、そこから長江が謎解きを始めるのがパターンで、しょうもないと思いつつ、段々とはまってくるのだ。

 よく知らない作家なので、ウィキペディアに頼ると、兼業作家なので読書量が少なく、他の作家のトリックとかぶるのを危惧し、この本のように極めて限られた「クローズド・サークル」で話を進行させるそうである。WOWOWでドラマ化された作品もあるという。この作家は結構きまじめな人ではないだろうか。作品も言葉尻をとらえづらいように書いているように思えて、「隙のない人」などと勝手な想像をしている。

 この作家について、これまで知らなかったことを悔やむってほどに打撃を受けたわけではない。でも、なんかもう一冊くらい手にする機会があってもいいと思う。石持浅海を教えてくれたたらば通信に感謝しつつ、そろそろ「Rのつく月」だなあ、と思う。