晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニングと気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「扉は閉ざされたまま」

 「たらば通信」にて、せっかく知ることとなった石持浅海。やはり評価の高い作品を読むべきでは、という変な義務感にかられて「扉を閉ざされたまま」を購入した。2006年度の「このミステリーがすごい!」で第2位。一昨年6月に発行された文庫版12刷についた帯では18万部のベストセラーとある。(帯自体は後からでも付替えられるが)

 冒頭から殺人のシーンで始まる。大学のサークルの同窓会で集まった男女7人が宿泊するのは、成城のペンション。23区内でペンションというのも妙だが、ハイソな「成城住まい」が味わえるのが売りだ。ペンションのオーナーの弟が幹事。ここに招かれた男が、大学の友人を殺す場面から始まり、殺しの動機を知らされないまま、犯人目線で話が進む。いわゆる倒叙ミステリーだ。

 

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

扉は閉ざされたまま (祥伝社文庫)

 

  成城のペンションは人気だったが、その人気が理由でオーナーは体を壊し、一時休業。建物は使わないと痛みが進むというので、その弟が幹事で一泊付き同窓会を企画する。集まって昼食をとった後、夕食まで各自部屋に戻っている間に「事件が起きる」。正確に言うと、「事件」が起きていることは犯人しか知らない。被害者は密室となった部屋から戻ってこない。気の置けない仲間の集まりなのに、部屋にカギをかけていること自体から疑問を持つ参加者たち。当初は寝ているのだろうと、先に始めている友人たちだったが、閉ざされた部屋に自殺説まで浮上し、犯人の思惑通りに事は収まるように見えた。しかし知人ながら同窓生の妹である、碓氷優香(うすいゆか)だけが会話のやりとりの中から、「閉ざされた扉」に疑問を抱く。

 飲み会に持ち込まれた話の話者の言葉から解決していく「Rのつく月には気をつけよう」と同じく、やはりキーは会話。少し慣れたせいか、ところどころで「ここが(追及側に)突っ込まれるかな」というのがわかってきたような。解説で書かれているように、確かに動機は弱いような気がするが、憎悪に満ちたような動機では会話にもブレが生じよう。

 警察小説に慣れた読者には、パンチが足りない気もするはずだが、静かな心理戦が好きな向きには結構おすすめかも。犯人がわかりつつ、ここまで動機がわからないまま、話が進むのは新鮮だった。(あまりミステリーを読まないせいもあるが)それに、酒の蘊蓄が所々にあらわれるのもなんか楽しい。この作家、最近はどんな仕事をしているのだろうか。もう一冊くらいは読んでみよう。