晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニングと気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「淵に立つ」

 シネマ・ジャック&ベティで「淵に立つ」を見た。カンヌで「ある視点」部門審査員賞を受賞したのは知っていたが、よく知らないままに席に着いた。筒井真理子がでているので、ハッピーエンドでは無い予感はしていた。2時間ドラマでも、この女優はどこか幸せになりきれない役が多いように思える。でも、この映画では彼女の起用が成功している。(たぶん)

 町工場を営む鈴岡夫妻(古舘寛治と筒井)のもとに、夫の友人である八坂(浅野忠信)が訪ねてくる。鈴岡はなにか出所してきた八坂に〝借り〟らしきものがあるようで、妻に相談もせずに住み込みで働かせることを決めてしまう。夫妻の間にはオルガンのコンクールを控えた小学生の娘・蛍(篠川桃音)がいる。強引な決定に妻・章江は反発するが、殺人の過去を告白し、娘にオルガンを上手に教える八坂に好意を超える気持ちを抱いていく。コンクールの前日、章江に関係を迫り拒絶された八坂は、蛍に重い後遺症の残る怪我を負わせ消えてしまう――。

 8年後。重い障害が残った蛍に、幾度となく手を洗い続ける潔癖症になってしまった章江。町工場は順調のようだ。夫妻は興信所に頼んで、八坂の行方を追っているが足取りはつかめていない。内容はこのくらいにしておくが、ここからが見ている方を何か起こるのではと心理的に追い込んでくる。

 正直、誰にでもお薦めできるような映画ではないが、フランス映画を見慣れた人なら結構好きかも。「あの男が現れるまで、私たちは家族だった」というコピーだが、娘の障害という高い代償を払ったものの、短い期間でも家族らしくなったのは、「あの男」が現れたからかも知れない(いや、そんなことはないか)。とにかく家族のあり方を考えさせられる119分。深田晃司監督。