晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「くう・ねる・のぐそ」

 刺激的な題だ。サブタイトルには「自然に「愛」のお返しを」とある。著者は「糞土師」を名乗る伊沢正名さん(なんとなく「さん」づけ)。命あるものを口にしているヒトが、自然にお返しできるのはウンコしかないと、野糞をはじめた。

 自然保護運動をはじめた筆者は、自然保護を叫びながらウンコをトイレで処理して、自然のサイクルからはみ出させていると感じる。そして1974年元旦、山に登り「意図的」野糞の第一号をひりだしたという。何か堅苦しいような印象を与えるかもしれないが、時折ダジャレを交えた文体は極めてやわらかい。エンタメノンフと言ってしまって差し支えない。

 筆者は徐々に野糞の比率を上げていき、2003年には1000日続けて野糞をする「千日行」を達成する。野糞をすると言っても、一定の社会生活を送っている以上、もよおしてきたからとすぐできるものでもないだろう。伊沢さんは、シチュエーションにあわせて、前もって大便をしておくなど、便意をコントロールできる技を体得するのだ。

ヤマケイ文庫 くう・ねる・のぐそ 自然に「愛」のお返しを
 

   野糞も紙使用から葉っぱ使用へ、方式も左手を使ったインド式を確立していった。拭き心地のいい葉を季節別に紹介していたりして、もしかしてお世話になるときがあるのではとついつい付箋をつけてしまった。伊沢さんの「野糞道」は段々とエスカレートし、野糞がいかに土に還るか、ウンコに集う生物、糞土の味見へと進んでいく。

 感心するのは、数十年にわたりしっかりとメモをとっているところ。結構病的な人なのでは勘ぐってしまったりもする。この本を読み始めた当初は、電車内では表紙を隠すように読んでいたが、中程からはウンコは汚くないとばかりに、気後れせずに堂々と読めるようになっていた気がする。