晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「オレがマリオ」

 今年は「サラダ記念日」刊行30周年だそうだ。そういえば、文藝別冊でも俵万智が特集というか、取り上げられていた。そのタイミングを狙ったかどうかはわからないが、文春文庫で、第5歌集「オレがマリオ」が出た。ちなみに第1歌集「サラダ記念日」から、「かぜのてのひら」「チョコレート革命」「プーさんの鼻」の順。短歌に詳しいわけではないが、第2歌集以外は目を通している(この際、これも手に取ってみようとおもっている)。

オレがマリオ (文春文庫)

オレがマリオ (文春文庫)

 

 「サラダ記念日」についてはあまり語る必要はないだろう。出版以来200万部超え、一種の社会現象となった歌集で、カジュアルな題材をうたった斬新さから、短歌を一挙に身近なものにした。いまだにこの歌集から、いくつもの歌が取り上げられる。「身近」とは書いたものの、そのフレッシュさやストレートさは、同世代(やや年下)の自分としては、あまりに眩しくて、非常に遠い存在に感じられた(実際、そうだが)。

 しかし、この第5歌集、東日本大震災をきっかけに息子を連れて石垣島に移り住む中で、生まれてきた歌を集めているだけに、どこか共有できる点があるような気がした。田舎が被災地、子を育てる立場という視点もあるのだろう。染み渡る歌が多いのだ。

世話になる人に頭を深々と下げる七歳板につきたり

 

ゆきずりの人に貰いしゆでたまご子よ忘れるなそのゆでたまご

 後者は引用される度合いが高い歌だが、わかるよわかるという気になる。昔は、旅行中の軽食としてゆでたまごをよく食べた気がする。常磐線といわれると、4番目くらいにゆでたまごの印象が浮かんでくる。父がよく食べていたせいだろう。

汚染米を「おせんべい」と誤読して屈託のなき子は秋のなか

 これも親目線で口元がゆるんでしまう。かの震災は、ストロンチウムとかシーベルトとかのカタカナも一般社会にばらまいた。これらの長ったらしいカタカナの専門用語っっぽいのを見ると、なんか身構えてしまうのだ。現れてくるもの、すべてが有害なものを思えてしまうから不思議である。この歌集には、そんないかめしいカタカナは出てこなかった気がする。数日後に被災地を離れたせいか。その代わり、「オスプレイ」はでてきたが。

 歌人は現在、宮崎に住んでいるらしい。お子さんも(たぶん)中学生になっている。どんな多感な子になっているかなと、他人事ながら、すこしばかり気になっている。