晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニングと気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「書店主フィクリーのものがたり」

 2016年本屋大賞の翻訳小説部門で1位となった、ガブリエル・ゼヴィン「書店主フィクリーのものがたり」を読んだ。翻訳小説部門は、2012年(第9回)から新設され、2017年は、トーン・テレヘン「ハリネズミの願い」が受賞している。「書店主」を購入したのは、昨年末に文庫化されて、かつ書店がテーマであることが主で、本屋大賞はあまり関係ない。実は日本翻訳大賞とちょっと混同していた。

書店主フィクリーのものがたり (ハヤカワepi文庫)

書店主フィクリーのものがたり (ハヤカワepi文庫)

 

  アリス島にある唯一の書店、その名も「アイランド・ブックス」。「店主のほかに、フルタイムの店員はいない。児童書の棚はきわめて少ない。ホームページはネット上に出たばかり。(中略)在庫は主として文学関係」と書店について、こんな説明がなされている。駅周辺に新刊書店がない町に住んでいる者にとってはちょっとうらやましい。「本屋のない町なんて町じゃない」という部分に同意する。児童書は多少充実してもらわないと困るが。

 出版社の担当者の後任として新刊の説明にきたアメリア。応ずるフィクリーは新顔に自分の趣味について話す。お好みの本ではないものとして、「ポストモダン、最終戦争後の世界という設定、死体の独白(中略)四百頁以上のもの、百五十頁以下の本はいかなるものも好まない…」などなど。略しているが、結構事細かく羅列し、この書店主の偏屈さが伝わってくる。こんな奴がいたらかなわんなと思いつつ、それでも書店があるのはうらやましい。逆に個性のある書店は大事だし、このご時世、それが生き残る一つの条件だったりもするだろう。

 それはそれとして、エドガー・アラン・ポーの稀少本の盗難、捨て子のマヤを引き取るところからストーリーにギアが入る。そして、そのマヤの存在がフィクリーの偏屈な気持ちを徐々に丸くしていく――。

 立ち読みして購入に至ったのは、各章の扉に短編小説のタイトルが紹介され、そこにフィクリーのコメントがあるところ。当たり前といえば当たり前だが、本筋に本の話が絡んできていて、実際そこには満足している。警察署長のランビア―ズがなかなかの存在感。楽しめました。