晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニングと気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「抗生物質と人間」

 一種の警告の書である。言い過ぎかもしれないが後味の悪い本だ。多くの命を救ってきた抗生物質だが、中には問題(副作用)を起こす、もしくは起こしうるものがある。短期的なものに関しての対策や知見は蓄積できてきたが、長期的な面での副作用はあまり考えられてなく、一定期間副作用が出なければ「安全」と見なされてきた。

 門外漢なので、詳しく書こうとするとボロがでて、逆に単純に書こうとすると舌足らずになってしまうが、備忘録代わりに整理に努めてみる。ヒトの体内には「常駐」している細菌がある。常在細菌というのだが、知られているだけで1000種を超えるという(4000種説もあるとか)。

 この本の副題は「マイクロバイオームの危機」。ヒト・マイクロバイオームは、この常在細菌が行う生命活動(微生物と宿主の相互作用などを含んだ)全体を包括した概念を指す。本題の「抗生物質と人間」と結びつけると、いまや常用されている抗生物質がヒトが本来持っている細菌に良くない作用を引き起こす問題(の可能性)についての本ということ。

  たとえば、昔よく耳にした「ピロリ菌」。一種の常在細菌ながら、消化管潰瘍や胃がんを引き起こす可能性があるといわれている。しかし「駆除」して不在となると、逆流性食道炎食道がん、喘息を引き起こす可能性があるという。そして、抗生物質の過剰使用が「耐性菌」を生み出し、他の感染症や免疫性疾患に罹患させやすくする。

 とはいえ、使用を中止するわけにはいかない。抗生物質の効果は間違いなくあるからだ。では、その使用法を見直していこう。すべてではなく特定の細菌だけに効く抗生物質を使用すれば良いが、それには間違いなく時間を要する。いやいや、完全に有益なだけの薬など存在しないのかもしれない(のだろう)。

 本書は、抗生物質がなくて亡くなった筆者(もちろん俳優から政治家に転じた人ではない)の祖父母やペニシリンの発見などのエピソードが各章の冒頭に書かれていて、その面白さに筋を見失いそうになるが、総じていい読書となった。