晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニングと気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「これから泳ぎにいきませんか」、二階堂奥歯さん

 穂村弘の書評集「これから泳ぎにいきませんか」を買った。昨年の暮れに「きっとあの人は眠っているんだよ」(こちらは読書日記)と同時に刊行されて、懐具合が苦しくちょっと迷惑だったが、なんせ穂村弘なので無理して一緒に購入した。

 最初の方は比較的短い書評が多く、「これなら文庫化を待てばよかった」とやや後悔まじりで読んでいた。それでも普段読まない漫画や歌集の評は新鮮な部分があった。

  2章に入ると、文庫解説やエッセイ、寄稿がそろい、ボリュームがあって満足感がでてきた。そして、アルバムでいうとタイトルチューンというべきか、「これから泳ぎにいきませんか」を読み、二階堂奥歯なる人が存在していたことを初めて知った。このタイトルは、編集者としての奥歯さんが穂村氏と打ち合せ後に突然言い出した言葉だそうだ。時刻は夜10時を過ぎていたという。

 この項を読んだ後に、二階堂奥歯さんがウェブ上に残した「八本脚の蝶」を読んだ。仕事中だったためにあまりきっちり読めていないが、わからない作者も多いし、咀嚼しきれない文章も多い。むしろカルヴィーノなど知っている作家が現れるとホッとした感じすらする。類似性という意味ではなく、自分との距離感だが、最果タヒ「グッドモーニング」を読んだときに感じたものに近い。わかるふりしてもしょうがない。若いのにこんなに本を読んできた人がいるのだと素直に感嘆した。何年も前に亡くなっているという。せめて生前にその存在を知っておきたかったと思った。

 「八本脚の蝶」は書籍化されて、2016年の本屋大賞で「発掘部門および超発掘本」部門を受賞したという。書籍の方には書評などが収録されているという。こちらも読んでみないと。

八本脚の蝶

八本脚の蝶

 

  穂村氏の本に話を戻すが、取り上げる本の「散り方」がなんか美しいのだ。そもそも好きな歌人・作家だから肯定的に受け止めている部分もあるが、読んでしまうとすっかり満足。二階堂奥歯さんの存在を教えてくれただけでも十分もとがとれた。