晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「上を向いてアルコール」

 定期的に走るようになってから「翌朝」のことを考えて飲むようになった。酒に弱くなった、年齢的に無理が利かないという体力的理由がベースにあるが、気持ちとして随分と抑えが効くようになった。まあ、金銭的な理由もある。とことん飲むには金がかかる。このご時世安い店も少なからずあるが、そのような店に限ってハイボールは氷ばかりで何杯飲んでも、あまり酔えない。

 自分はアルコール依存症なのか、と自問自答することがまれにある。しかし底辺では自分は「違う」と思っている。「違う」という理由付けが、小田嶋隆「上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白」と似ていると思い、嫌な気持ちになった。確かに、自分は「飲み過ぎではない」と根拠なしに思っている。

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

上を向いてアルコール 「元アル中」コラムニストの告白

 

  筆者によると、その世界に片足突っ込んでいるくらいの人の方が危機感を持っていて、両足を突っ込んでしまうと「全然大丈夫だ」と否認の側に立ってしまうそうだ。自分もそうである。「(昔とくらべ)量が減ったから」「(レースが近いと)ちゃんと止められる」あたりが、自分が依存症と思わない根拠だったりするのだ。しかし、アル中にとって量や頻度が理由にならない。

 筆者もそうだった。編集者が粘り強く病院行きを進めてくれたので、最終的にこのような本を書けるようになるまで立ち直った。医者も筆者のプライドをくすぐり彼を治療の道へ導いた。

 ただ症状をくらべてみると、自分はまるで筆者の境地に達していない。酒が理由で点滴を打ったことはないし、幻聴、幻覚の症状はない。せいぜい、駅で吐いたとか、寝てしまって山手線を何周かしてその間に財布を盗まれた程度だ。カードを使われたが、不正使用だったので請求はされなかった。盗んだ奴はカードで金を引き出そうとして失敗したそうだ。防犯カメラに顔が写っていて、カード会社が言ったか警察が言ったか忘れてしまったが(カード会社に言われ、警察に被害届を出した)、「常習犯ですね」などと言うから、「なら早く捕まえてよ」とかみついた記憶がある。

 まあ、それはそれとして、説得力を感じる本だった。アルコール依存とは考え方の問題で、まだまだ自分はそのレベルではないと(まだ)信じているけど、老化との合わせ技でそのレベルに落ち込んでいく可能性だってある。まだ、酒を止めようという気になれないし、量は減っていくだろうが、今後も酒と仲良くしていきたいと思っている。

 小田嶋隆のファンではあるが、自分の嫌なところを見せつけられた気がして、あまり気持ちが良くない本だった一方で、きちんと読み物として「エンタメ」になっている。10年前に執筆を依頼されながら、筆が進まなかったそうだ。壮絶な体験を思い起こしたかも知れない。その意味では自分はまだまだと安心しながらも、症状には個人差もあるだろう。安心したり警戒したり、いまだに立ち位置が決まらない。