晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「静かな炎天」

  出たらすぐに飛びつくってほどではないが、若竹七海の「葉村晶」シリーズは気に入っている。葉村晶は女性の探偵で、ミステリー専門書店でも働いている。肩肘張らない内容に本の話題が絡んでくるのがいい。積んであった文庫本が崩れていて「静かな炎天」が目に入った。まだ読んでいなかったか? ページを開いてみると、短編集。葉村晶シリーズの短編は読んでいないようだし、「炎天」というタイトルがこの酷暑にぴったりだと思い、読んでいる本をしばしストップして、こちらにシフトした。

静かな炎天 (文春文庫)

静かな炎天 (文春文庫)

 

  葉村晶シリーズは「プレゼント」(中公文庫)でスタート。「依頼人は死んだ」(短編集)は文春が発行し、以後、「悪いうさぎ」「さよならの手口」「静かな炎天」と続く。間が悪いか良いのかわからないが、「錆びた滑車」が8月に発刊された。「さよならの手口」以降は文庫オリジナルである。「炎天」の解説によると、「ヴィラ・マグノリアの殺人」(光文社文庫)にも古書店で働く葉村さんが登場するそうである。

 話を「炎天」に戻すと、6篇を収録。(2014年の?)7月から12月の出来事が、四十肩を引きずっているところを見ると、連作風に書かれている。事故死した女性の持ち物を追う「青い影」、依頼が続くのには「裏」があった「静かな炎天」、失踪した作家を追う「熱海ブライトンロック」など、軽妙ながらもシビア、いやいや、重い要素がありながらも軽い話に引き込まれる。この勢いだと、「錆びた滑車」も買っちゃいそうだ。

 解説を書いている書評家(大矢博子氏)ほど、女性探偵という設定に魅力を感じているわけではないのだが、個人的には、頭は切れるもののどこか不器用そうで、探偵と書店手伝いといった設定に共感を感じているのかもしれない。やっぱり、ところどころに本のネタが埋め込まれているのはたまらない。巻末にミステリ紹介が載っていて、これもありがたい。さすがに出てくるミステリがすべてわかるほど、通じゃない。新刊はこれが載っているかどうか、本ネタがどれだけ埋め込まれているかを購入の判断材料とさせてもらおう。