晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニング(最近ちょっと無理している)と気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「コンビニ人間」

 村田紗耶香「コンビニ人間」が文庫化されたので読んでみた。帯によると、18ヵ国語に翻訳されるとのことだ。紀伊国屋書店でも、「Convenience Store Woman」として英語版(米語版?)が売られていた。

 会社勤め歴なし、彼氏&男性経験なしの36歳。コンビニバイト歴は18年で、コンビニ食品を食べ、「店員」でいるときのみ世界の歯車になっていると実感できる主人公。外国の人が読んだら、ちょっとしたカフカものを読んでいるような感覚だろうか。

コンビニ人間 (文春文庫)

コンビニ人間 (文春文庫)

 

 村田紗耶香氏特有の(というほど読んではいないが)社会現象を逆手にとり、かつ「逆こそ真なり」といった話の展開に引きずり込まれるのは、こちらにもそのような背景を受け止める要素が十二分にあるからだろう。読みながら、若き日のバイト時代を思い出した。小説の主人公ほど極端ではないが、当時も「マック(マクド)人間」のように、アルバイト生活を軸に、そこでの評価を軸に活動している人間がいたことを思い出した。

 いまのマクドナルドとはシステムやオペレーションが違うはずだが、20秒ほどでバーガー類12個のラップができるとか、ピーク時に一人でハンバーガーを作る作業(グリル=ハンバーガーを焼く、ドレス=ピクルス、ソースなどを置く、バンズ=バンズを焼く)を任せられるなどの「基準」で尊敬され、レベルがすごい人は店の伝説とされていた。約35年前は、相鉄のマクドナルドが日本国内の売り上げで上位にいたので、こちらのイベント時に「ヘルプ」で来てくれる相鉄のクルーを、まるでステータスが違う人間(その世界でレベルが高い人間)のように扱ったものだ。売り上げが高い店のクルーは概してスキルが高いのである(マックのバイトの話になると、カタカナが多くなる)

 コンビニだって、物品販売のほかに、切手を扱い、チケットを発券し、荷物の送付など、多様な仕事が多い。外国人の店員が増えてきたが、よくぞここまでの仕事を覚えられるなと、感動すら覚える。「コンビニ人間」を読むと、自分が働いていた時期のマクドナルドよりも、バイト依存度がはるかに高い(と同時に、サポートする社員が少ないため店長への依存度も非常に高いと見た)。

 村田氏自身がコンビニで働いた経験をもとに書いているようだが、主人公は口調やファッションに関して周りに影響を受けて変わっていく。自分というものをあまり持っていないように思えるが、その徹底さはひとつの個性として逆に際立っている。

  元バイト男性との「愛のない同棲」が話を動かしていく。ここから、いままで抑えていた周囲の本音が出てくる――。結構、読まされちゃったので、ほかの作品にも手を出してみるつもり。