晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間」

 周りにもいたので、それとなくどんな症状かはつかめている、と思いつつ、でもわからないうつ病。自分がかかってみないと…いう部分はある。同僚にいたこともあるし、同じフロアで働いていた人が自殺してしまったケースも一度ある(25年くらい前だったと記憶する)。今朝は症状が落ち着いている、と家族が安心した隙に電車に飛び込んでしまったそうだ。うつ病だったとは亡くなってから知った。仕事の絡みのない先輩だったが、やはりショックが大きかった。その後は、長期間休みながらも闘っている人、復活した人が数名。割とストレスが強い職場なので、いまでもどこかの職場にいるかもしれない。

  先崎学うつ病九段」を読んだ。軽妙な文章を書く棋士として、存在は知っていた。この本にも出てくるが、漫画「3月のライオン」の監修もしている。表向きは「一身上の都合」だったが、2017年9月から18年6月の復帰まで、うつ病が原因で入院・休場していたのだ。本書の発売でそれを知ることになるのだが、「発信型」の、しかも四六時中、頭を使いまくっている棋士でも、うつ病になるのだと、意外な気がしたのが正直なところである。 

 現在は「藤井ブーム」に沸く将棋界だが、当時は「ソフト不正使用」でもめて、将棋界でも一定の立場にある先崎氏はマイナスイメージを払拭するのに身を粉にしていたらしい。将棋連盟に窓口はあるものの、それを飛び越えて直に仕事が入ってくることも多く、それをすべてこなそうと受けていたところ、発病してしまったそうだ。

 頭が重く気持ちが暗い。集中できない。意欲を失い、自己否定。死への誘い。先崎氏の兄は精神科医なので、アクションは早かったのではないか。早々に入院をすすめ、入院、休養、本を書くことによって、復帰を果たしていく。周囲の棋士たちも一役買った。

 強調されるのは、「うつ病は脳の病気である」ということ。読んだことで、身近に感じられた人が多いのではないか。自分もなり得る、家族もなり得る。そして、治すことができる。その意味では、力づけられた本になった。そうそう散歩というのも、回復を助けるらしい。その部分を読んでいたところで、かつて、金哲彦氏の本で(「走る意味」か「癒しのランニング」、もしくはどちらも)、心を病んだ人をランで復調させていることを思い出した。走っている間は、うつ病は大丈夫かなと思いつつ、無理は禁物。何とか楽しみながら、タイムを削っていきたい。速くなれば、楽しくなる。けど、あまり自分を追い込まないようにしたい(というか、そこまで追い込む気力がない)。そこが問題か。