晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「すいません、ほぼ日の経営。」

 経営にはまったく興味がない。いわゆる経済系の本も読むことはないが、糸井重里と電車内の広告につられて読んでしまった。「企画書や会議はいらない」「金曜は自由行動」が心に刺さった。糸井重里という存在は一種のあこがれである。実際はどうかしらないが、肩の力を抜いて人生を歩んでいて、かつ成功しているように映る。株式会社ほぼ日も、彼の考え方が反映されているようで、傍目には順調のように見える。売れっ子コピーライターとして社会を動かしていた糸井氏個人がそれなりに成功するのはまだわかるが、発信力のある彼をトップに据えているとはいえ「他人の集まり」である一定規模の会社までも上手くいくものなのか。この本は、ジャーナリストである川島蓉子氏が糸井氏に話を聞くという形式だ。

すいません、ほぼ日の経営。

すいません、ほぼ日の経営。

 
 会社中心ではなく、人中心というのが伝わってくる。たぶん、一般的な感覚から言って「ゆるい」。ただ、それだけに各自に質を求められているようにも思える。会社をのぞいてみたわけではないが、もっと「個」が基準となっている様子が伝わる。ワークライフバランスとか看板を掲げて、公休・有休消化率や女性のポストづくりなど、社内的に数字ばかり追っている会社よりは一歩進んでいる様子だ。
 「個」が基準になっているように見えるとはいえ、あくせくして「優秀な人材」を集めているようには思えない。採用の基準は「いい人」だそうである。これだけなら、自分もまんざらでもない。シニアも採用してくれるだろうか(笑)。結構、面接を重ねるらしいので、そこらで化けの皮が剥がされそうだが…。
 ほぼ日といえば、「ほぼ日手帳」がメイン商品といっていいのだろう。これが会社「ほぼ日」の売上高の6割くらいを占めているそうである。現在、80万部ほど売れているらしい。決して安い手帳ではない。自分も1年使ってみたが、使い勝手というよりは値段で続かなかった(だからと非難するつもりはない)。そう、ほぼ日で売っているものは、東日本大震災の被災地のサポートを兼ねた商品など、決して安くないが、でも「良さ」が伝わるような売り方で、少なからずファンを獲得しているのだ。
 仕事も底辺に流れているのは「おもしろそう」という発想のようだ。「誠実」と「貢献」という言葉がキーだそうである。「誠実」という姿勢と「貢献」するよろこび。そして、この二つの中では「誠実」がより大事ということである。社の行動方針として、「つよく」「やさしく」というのもある。これも「言葉に縛られてしまわないように、縛りようのない言葉をつくった」とか。
 何か(職場として)ゆるそうなのだが、実際は、きちんと成果を求められているような気もするが、発想の転換であまり生々しい言葉が前に出てこないようになっているようにも見える。正直、大きな企業じゃないから、このようなゆるそうだけど結果的に統制がとれるような組織になっている気がしているが、このような発想も頭が硬いのかも。幸い、組織を動かす立場にはないが、働き手としてのスタンスとしてもためになることが少なくなかった。でも、糸井氏の言葉に暗示をかけられているような気も、やっぱりしている。タイトルに「すいません」と入っているのは、糸井氏が大上段から経営について言えることではないという姿勢が反映されたそうだが、「うまくいっていて、すいません」ともとれるから不思議なのだ。