晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「グリーンブック」

 ひさしぶりに人に勧めたくなるような映画を見た。最近、一段と増えた実話ベースの作品だが、多くとはちょっと一味違う。人種差別がより強い時代の、そしてより強い地域を旅する物語を、会話などにコメディの要素を交えて消化しやすくしている。

 時は1962年。イタリア系米国人のトニー(ヴィゴ・モーテンセン)はナイトクラブの用心棒を務めているが、店がリニューアルで数カ月の営業停止。この当時に休業補償などはなかったであろう。家族を食べさせるためにはカネが必要となった。

 そんなタイミングで、ナイトクラブのオーナーから「ドクターが運転手を必要としている」という電話をもらう。面接は明日だという。面接の場所はカーネギーホールの上の高級なアパートメント。トニーは、アフリカの王室のような部屋に通されて、金持ちであることは悟ったが、あまり理解できない趣味だっただろう。「待たせてすまない」と登場してきたのは、黒人ピアニストのドクター・ドン(ドナルド)・シャーリー(マハーシャラ・アリ)だった。

 人種差別が色濃い米南部をトリオでツアーするにあたり、運転手兼用心棒を雇いたいという話だった。ドクターとは医者ではなく、ロシアなどで音楽などを学んできたシャーリーが学位を持っているからだろう。トニーも黒人には偏見を持っている。しかし背に腹は代えられない。交渉で希望額を得ることになり、南部の旅に出ることになる。

 タイトルの「グリーンブック」は、黒人向けの旅行ガイド、つまり黒人が利用できる施設のガイドブックのことだ。1966年ころまで発行されていたらしい。拒絶された場合はこのガイドブックに沿って宿を選ぶ。

 映画の魅力として、本筋も面白いが、やはり車の中の二人の会話だろう。黒人で「お高い」シャーリーと無学ではったりのトニー。通常のパターンと主従関係が逆なのが面白い。噛み合わない二人が徐々に調和を見せてくるが、しかし南部の差別は一流ピアニストにも容赦ない。ここからは見てのお楽しみ。

 映画を試写で見せてもらい、このドン・シャーリーというピアニストに興味を持ったが、今では(?)音源が見つからない。あってもCDは高い。ストリーミングはあるようだが、こちらにその習慣がない。古い人間なので、できればアルバムを通して聴きたい。クラシックやジャズ畑の音楽家なので、ポップアーティストと違い、アルバム単位で聴きたい。なかなかネットでも情報が少ない類のようだが、ゴールデングラブに続き、アカデミー賞でも取ってくれれば、過去の音源の再発売をしてくれるだろうか。そこらへんも期待している。