このご時世、人前では読みづらい本のタイトルだが、雨が降って走れない休日の朝に手に取って一気に読了した。さすがに読ませるな、ガルシア・マルケス。解説を除くと、130ページほどの小説なので、読むにはさほど時間はかからないのだが、それはそれで夢中にさせられた。
冒頭の一文は以下の通りだ。
満九十歳の誕生日に、うら若い処女を狂ったように愛して、自分の誕生祝いにしようと考えた。
いけない本に手をつけてしまったような気持ちになった。とはいえ、主人公が高齢なだけあって、話は落ち着いた調子で始まる。主人公は、ものを書くこと以外の仕事についたことはないと書いてある。なんとなくマルケス本人を思わせる。
わが悲しき娼婦たちの思い出 (Obra de Garc〓a M〓rquez (2004))
- 作者: ガブリエル・ガルシア=マルケス,木村榮一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/28
- メディア: 単行本
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主人公は娼家に電話をする。処女を手配するとなると、時間がほしいと言われる。その間に、自分の降ってわいたようなこのような感情がどこから来たのかを思案したり、過去を振り返ったりする。彼は表向きは平凡な男だったが、夜には別な顔を持っていた。そして連絡が来て、14歳の少女と出会うことになるのだが――。
この作品は、2004年に発表された小説で、マルケスの遺作となる。川端康成「眠れる美女」から想を得たとのことだ。読むのを憚れるよう題ではあるのだが、内容は落ち着いた調子で淡々と進む。訳者の言葉を借りれば「老人賛歌」ともいえる作品のなっている。
マルケスの作品は「百年の孤独」を除いて、短編を中心に読んできたが、そろそろメインディッシュに手を付ける時期が来たのかな。物語に引き込まれた独特な感覚を思い出した。