ブータンの人と話す機会があった。ブータンといえば、民族衣装のゴ、幸福度が高い、国王といった印象しかなかったが、話してみると、結構オープンマインドな人たちなのだなあと月並みな印象を持った。会った人がたまたまそうだったと言われればそれまでだが、多民族国家なので「外国人慣れ」しているような気がした。知人に話してみると、共通の知り合いにブータン人と結婚している人がいたりして、実は結構身近な存在なのでは。
で買ったのが、高野秀行「未来国家ブータン」だ。いつものパターンだが、この秘境めいた国での滞在記である。
バイオベンチャー会社の知人に誘われてブータンへ。渋った(ふり?をした)ものの未知の動物への興味から受諾した。
読んでみると、ブータンについて知らなかったことばかり。基本、半鎖国的な国でガイドなしで外国人は旅行などできないらしい。目的地も前もって伝える必要があり、滞在するだけで、一日250ドル(本作が書かれたのは2010年ごろ)ほど「滞在税」というか「外国人税」みたいなのが、かかるらしい。ガイドが必要なのは北朝鮮のようだが、ブータンの場合は生態系の外来種のような扱いなのではないか。
これは会った人に聞いたのだが、小学校に入るまではそれぞれの地域の言葉を話し、就学にともなって公用語であるゾンカ語を習う。同時に英語も習いだし、小学校の高学年あたりからは、ゾンカ語の授業以外は英語で習い始める。英語の発音のクセは強いが、慣れるとそこそこコミュニケーションは可能だ。日本語が達者だったので、主に日本語で話したのだが。政府の公文書は英語で書かれているとのことだ。
高野氏は、酒や男女間の話など生活感あふれる部分にもキチン?と焦点を当ててくる。ここでは書きづらい話だが、夜這いの風習があったり、いったん一緒に住みながらもダメ出しがあるときは男の荷物が玄関先に出されてたりするそうである。その場合は、きっちり受け入れて、別の人を探すそうである。これは民族とか部族で変わってくる話かもしれないが。
宗教は仏教ベース。チベット仏教に近いらしい。今流行りのSDGsを国レベルで地でやっているような印象。古いながらも国づくりのコンセプトは未来志向を感じさせる部分も多い。なるほど「未来国家ブータン」。タイトルにも納得した。