晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニング(最近ちょっと無理している)と気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「川の名前」

 小学5年生たちのひと夏の経験を描いた小説。と書くと、エッチな話を想像するかもしれないが、夏休みの自由研究の課題として近所の川を選んだ少年たちが自然と、偶然出会うことになる生物との関わりをテーマとした作品だ。読後感がすこぶる良い。

 さて、書いたのは川端裕人氏。これまでのお付き合いは、「「研究室」に行ってみた。」(ちくまプリマ―新書)や、科学畑を舞台にした文章を読んだだけだったので、完全にノンフィクションライターだと思っていた。アマゾンで検索してみると、小説も随分と書いている。逆に、ノンフィクションもの「も」たくさん書いているというべきかもしれない。購入したきっかけは、ハヤカワ文庫のキャンペーンでブックカバー欲しさに、同文庫から日本人作家を読んでみようと思ったから。伊藤計劃氏や原尞氏は、持っているので対象から外したところ、なぜか川端氏を選択した。「この人、小説を書くんだ」という気持ちが一番強かったからだったと思う。

川の名前 (ハヤカワ文庫JA)

川の名前 (ハヤカワ文庫JA)

 

  主人公は、世界をフィールドにしたカメラマンの父親を持つせいで、転校を繰り返している菊野脩。両親が離婚し、再婚した母親の方には居場所がなく、父親の妹と暮らしている。父親は取材旅行に出かけている。

 仲良くしているのが(話が進むと衝突もあるが)、通称ゴム丸や河童と呼ばれる友人たち。1学期の終わりに、担任から自由研究をしっかりやれと言われて、近所の川をテーマにすることにした。そして、そこにはいるはずのないある生物と出会う。

 その生物が世に知られることになり、ひと昔前の「タマちゃん」ブームを想起させるような出来事が起きる。毎日のように報道され続け、その生物の「愛護」を訴えて「保護」しようという動きも出てくる。いわゆるフィーバー状態の中、菊野とその仲間たちは、その生物にとってより自然な環境を求めて、あるアクションに出る――。

 気になるタイトルだが、岸由二教授(生態学)が自分が所属する川を決めて、それをミドルネームのように使ってみようという考え方から採ったものだそうだ。横浜市中区だと、大岡川とか中村川になりそうだ。この岸教授、「リバーネーム」という本も出しているし、川から地球を考えるといった本も出している。古本屋で見つけたら読んでみようか。

 それぞれの仲間の描き方、それに絡む大人たち、作者の自然や自然科学への愛情などが見えてきて、気持ちいい読書となった。この本で昨年を締めくくろうと思っていたら、酔っ払ってしまって、2020年最初に読了した本になってしまった。この本でスタートというのも悪くないな、という気持ち。さあ、今年は読むぞ。