晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニング(最近ちょっと無理している)と気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「黙殺」

 副題には「報じられない"無頼系独立候補"たちの戦い」とある。この「無頼系独立候補」とは、世間でいう泡沫候補のこと。著者の畠山理仁氏は、新聞紙面やテレビの報道であまり扱われないこの候補者たちを、一種の愛とリスペクトをこめてこのように呼んでいる。組織に頼らず、いやそもそも組織などは当てにせず、選挙で孤高の戦いをしている候補者たちに焦点を当てたルポ。この作品は、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞している。

 NHKから国民を守る党(N国党)の立花孝志氏はもはや別格になっているように見られるが、立花氏を含め、マック赤坂、中川暢三、ドクター中松ら各候補者の選挙戦の様子や主張などを取り上げている。著者の畠山氏はフリーランスライター。週刊プレイボーイなどで政治記事を書いているようだ。選挙時には、政策や主張がメディアに取り上げられない候補者を集めて公開討論会を開くといったような裏方的なこともしている。本を読んでいると、大手メディアから独立候補らへの橋渡し的なこともしているようにもうかがえる。長年の取材によって、この手の候補者についてのエキスパートといえる存在になっているのだろう。週プレに書いているせいか、筆致がポップというか、実にとっつきやすい。

黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い (集英社文庫)

黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い (集英社文庫)

 

  主要候補のみの取材に集中するマスメディアへの批判もある。ただ、筆者は新聞やテレビが主要候補に集中する理由も十分に知っている。どうしても紙幅や尺には限りがある。個人的にはもっとネット展開やBSの番組などで上手に活用できないかとも思うが、それでも人的な資源には限りがある。なかなか独立系の候補まで手当てできない。

映画「立候補」

映画「立候補」

  • メディア: Prime Video
 

  本では、まず映画「立候補」のようにマック赤坂に焦点を当てる。独立系候補の中で一番著名な人だろう。政見放送での「奇行」やほとんど主張を述べない街頭演説はよく知られている。映画を見ている者にとっては特段目新しい内容ではないが、メディアに取り上げられない苛立ちは伝わってくる。

 第2章の前半部分が著者の訴えたいところだと思う。日本は供託金がやたらと高く、なかなか選挙に出られないシステムになっているという。あまり気にしたことはなかったが、確かに示された他国の例を見ると、英国が7万5千円ほど、カナダが9万円くらい。衆参の選挙区や都道府県首長選で300万円というのはべらぼうに高い。そもそも設定が高いのは共産化を怖れたことが理由という説があるらしい(この部分は書き込んでほしかった)。韓国も150万円と比較的高いが、これは統治時代のなごりではないかと勝手に想像している。

 要はもっと気軽に選挙に出られる、もしくは政治に関わる環境を作りたいということだろうか。第3章は大勢が立候補した都知事選での独立系候補のルポ。いろんな人がいるものだ。そして、こんな分野に強いライターもいるのかと感心した。