晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「さよならテレビ」

 久々のジャック・アンド・ベティで「さよならテレビ」を見た。会員更新時にもらった無料鑑賞の券をそのまま使った。「さよならテレビ」は、「死刑弁護人」「ヤクザと憲法」で知られる東海テレビの制作。先にテレビで放映されたものは、テレビ関係者の間でDVDが出回っていたようだが、尺をプラスする形で劇場版ができたようだ。カメラを社内に向けた、テレビの今日を問うドキュメンタリー。

 東海テレビ制作のドキュメンタリーには常に一種の期待感がある。今回も他がやらないという意味では面白かった。ただ、このようなものを作るのが「俺たち自浄能力があるぜ」という、一種のアリバイ作りというか、免罪符のような気もした。それでもやらないよりはましか。しかしまあ、テレビは大変だなあと、新聞・雑誌については多少知っている自分も同情めいた気持ちになる。その分、給料もいいのだろうが。デスク陣(中間管理職)の連中はいつも視聴率について聞かされるのか。それはついつい数字を追いたくなるわな。契約件数のグラフを壁に貼りだされた営業マンのような心境になっているのかもしれない(例えが昭和だが)。

 さて、本題。内部的にはハレーションを起こしつつ、撮影は進む。カメラが追うのは主に3人。キャスターの福島氏、ベテランの契約記者の澤村氏、そして、派遣という形で記者となった渡邊氏。正社員、契約社員、派遣という並び。テレビではよくある形だろう。福島キャスターはどこか殻を破れないキャスターとして描かれている。澤村記者は、法案名の言い換え(「共謀罪」と「テロ等準備罪」)を欺瞞と思う問題意識が強いタイプ。自ら「青臭い」といいながらも、ベテランであり、「是非もの」とか(社内的に?)Zなどと呼ばれるスポンサーがらみの取材などもそつなくこなす。渡邊記者は、昭和生まれのオジサンには頼りなく見える。一見して大丈夫かという気持ちになった。食レポなどは、あまりにぎこちなくて可哀想なので止めてあげたくなった。派遣のせいか、政治や事件物というよりは、街ネタの取材が多いようだ。経験次第では、より報道っぽい仕事を任されるのかもしれない。

 テロップはほぼなかったので、時に何を言っているかとらえられなかった部分もあったが、変にテロップやナレーションを入れて、見るものを「導く」ようなことをしたくなかったのではと勝手に推測している。

 ややネタバレになってしまうが、結局は何も良くならないし、解決もしてない。現状を見せられただけであるが、ドキュメンタリーというのはそれでいいのだろう。見るものに考えさせるというのが一番の目的なのかもしれない。もちろん、場面の切り方や構成は作る側が恣意的にならざるを得ないが…。

 しかし、つくづく結構なヒエラルキーがある世界であると思わされた。派遣の記者は、仕事を覚えている段階とはいえ、金欠に苦しんでいる様子。これは逆に新聞などが追っている道のようにも見える。同じ、もしくは似たような仕事をしながら、待遇に格段の差があるというのもテレビが抱えている問題の一つだろう。現に、テレビの不祥事なども突き詰めると、制作会社などとの格差が遠因にあったりする。

 東海テレビはフジテレビのネットワークに参加している。そういえば、フジテレビも「ザ・ノンフィクション」という番組をやっていて、時に面白いテーマを扱うときがある。たぶん、数字はとれないだろうけど、この手の番組は続けてほしいと切に思う。