晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

 ブレイディみかこさんの本が売れている。新刊の「ワイルドサイドをほっつき歩け ハマースミスのおっさんたち」の出だしはどうかわからないが、この「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」は50万部を突破しているという。だいたいご主張はわかると思い敬遠気味だったが、他の本を買ってレジに行くときに、レジの近くにあったこの本を追加してしまった。なんかコンビニでの「ミンティア」みたいな買い方である。

 読んでいて売れている理由がよく分かった。以前、「花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION」を読んだ時には、日本人に英国の格差問題を投げ込んでもストライクゾーンは狭いだろうと思っていたが、今回は本人と、アイルランド人の配偶者の間に生まれた中学生の息子さんの目を通した、(勉強ではなく広い意味で)学校の問題に絞ってきた。あえて言えば、多様性で生じる問題だろうか。自分のランニングコースの一つで、近くを通る公立小学校は、5割くらいが日本以外にルーツを持つ児童が通うそうだ。その国・地域の数も二けたと聞く。すでに日本のテーマになっているということだろう。いままでの彼女の著書以上の普遍性を感じる。

  話は息子さんの中学入学から始まる。住んでいるのはブライトン。海辺の都市でLGBTが多いとされる、著者曰く「荒れた」ところだそうである。小学校は公立のカトリック校で、ここはいわゆる出来のいい学校だったとのこと。しかし中学校として選んだのは、学力的に底辺を脱した程度の「元底辺」校。カトリック校の流れで、もっとお上品な学校に行く選択もあったそうだが、家からの距離や学校訪問の印象などでこちらを選んだ。

 とっつきやすさの一つは「母ちゃん」「息子」の間のフランクな会話の中にレイシズムや格差問題に対する心構えのようなヒントになる部分が埋め込まれているからではないか。ラジオで、ブレイディみかこさんが出演した番組を聴いたことがあるが、彼女の息子さんは成績はわからないが(悪くないと思うが)、考え方がしっかりしている。そんなこと言われても迷惑だと思うが、それこそ「民度」が高い。読んでいると、古典的な人種差別をする同級生や、アイデンティティーに悩む子が、なんかジャイアンのび太のように身近に感じられてきて、とっつきやすいのである。

 「多様性ってやつは物事をややこしくするし、喧嘩や衝突が絶えないし、そりゃないほうが楽よ」

 「楽じゃないものが、どうしていいの?」

 「楽ばかりしていると、無知になるから」

  親子の会話の象徴的な部分だ。横浜市中区も10人に1人が外国人。これは国籍の話であって、日本以外にルーツを持つとなるとその割合は増えるだろう。中華街があるので中国系がもちろん多いが、欧米系の人も多いし、近年はアジアの人も増えてきた。国籍はもちろん、人種の違う親の間に生まれた子どもたちを当たり前に見かける環境にある。うちの子にも読ませてみようか。そんな気持ちにさせられた。