晴走雨読 横鎌日記

無理しないランニング(最近ちょっと無理している)と気ままな読書について綴ります。横浜と鎌倉が中心。映画やお出かけもあり

「ミッドサマー」と「ヴェニスに死す」

 嫌なものを見てしまったが、誰かとその内容を共有したくもある。そんな気にさせられたのが、アリ・アスター監督の「ミッドサマー」である。「祝祭スリラー」「白夜スリラー」とか「青空スリラー」などと形容されている。「スリラー」とのギャップを考えると「青空スリラー」がいいか。あまり細かいことは書かないつもりだが、どうしてもストーリーには触れることになる。素の状態で観たい人はこれ以上は読まないでください。 

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 米国の大学生が夏休みにスウェーデンに行くことに。同国出身の留学生がスウェーデン夏至祭に合わせて招く形になる。クリスマスとともに同国ではメインの祝日で、寒い時期が終わり一番日が長くなるタイミングで祝うらしい。ちょっとした解放感もともなうのだろう。この時期に結ばれるので、スウェーデン人は3月生まれが多いという話は聞くが、自分が知っているサッカー選手の生年月日を検索したが、一人もいなかった。

 映画に戻るが、スウェーデン人留学生はとある共同体の出身で、今回の夏至祭は90年に1度の大祭にあたり、より盛大に行われるようだ。主人公は、フローレンス・ピュー演じるダニーは、彼(ジャック・レイナー)との仲がどうもあやうい。妹が双極性障害で、父と母を巻き込んで一家心中してしまう。ダニーは精神的に彼への依存度が高くなるが、恋人にはそれがわずらわしい様子だ。実はこの旅行も、男の友達の「お楽しみ」としていく予定だったが、形だけ誘ったつもりが、彼に頼りたいダニーはついてきてしまった。

 地元の人々にとっては古式にのっとった祝祭だろうが、現代の米国人には(映画を見ている人にも)異質に思える。最初は興味本位だったのが、それが恐怖となってくる。そして興味がすぎたために(学生には文化人類学専攻がいた)、村のタブーを犯すことになる。

 白夜の中で起こる悪夢のような出来事、「子づくりの儀式」など、簡単に言うと子どもには見せられないのだが(そもそもR15で、ディレクターズカット版はR18)、スリラーとか、性描写とかで話を終わらせると、この作品をひどく矮小化することになる気がする。とはいえ、途中退席したとか、酷評する人の気持ちもわからなくもない。若い時に見た、ピーター・グリーナウェイの映画をちょっと思い出した。監督曰く、「ミッドサマー」は「ハッピーエンド」だそうだ。主人公がある状態を脱したと考えれば、村人たちは昔どおりの形式通りに祝祭を進行しただけ(タブーを犯した者が罰せられただけ)と考えれば、そうとれなくもない。

 さて、この映画の登場人物に、ビョルン・アンドレセンがいた。その昔、ヴィスコンティの「ベニスに死す」(映画は「ベニス」、小説では「ベニス」のほか「ヴェニス」「ヴェネチア」)で美少年役で出ていた人である。「ミッドサマー」では老人として登場している。50年も経っているのだ。映画では気づかなかった。

  映画を見た後、ついついトーマス・マンの原作を読んでしまった。こちらも疫病が絡む話だ。コロナウイルスで、スウェーデンは集団抗体をつくる対策を選択した。世界の中では異質と言えるかもしれない。現在のところ、抗体数は予測されたレベルに達していないそうである。そもそもコロナの抗体は持続期間が短いという話もある。

 コロナ禍で休映され緊急事態宣言解除後に見た、この映画。スウェーデンのコロナ対策と重なり、異質という感覚で見たためか、より恐怖感が増した気がしているのだ。ただ、何が正解なのかはまだわからない。