晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「雨の日はソファで散歩」

 読んでから少しばかり経って書いている。大雨の被害があまりにひどい反面、タイトルがあまりにお気楽なので、逆に書きづらくなってしまっていた。報道がコロナと水害から、コロナと猛暑に切り替わってきたが、水害の傷跡は深く、日常を取り戻すには相当な時間を要するだろう。この本の「雨の日」は、外出を億劫にさせる程度の雨である。念のため。

 1階のメインの入り口近くのテナントも空いている、桜木町駅前の「コレットマーレ」。重宝していた紀伊國屋書店も撤退し、行く機会は激減。ただ、地下1階にあった無印良品が拡張して4階に移ったのは好材料と思える。食、読書といった生活に関わる本も置いていて、行くのが楽しみになってきた。そこにあったのが、種村季弘「雨の日はソファで散歩」である。季弘は「すえひろ」と読む。種村さんは、他に「書物漫遊記」「食物漫遊記」などの著書がある。食や本に詳しく、その知識は映画や美術にも及ぶ。

雨の日はソファで散歩 (ちくま文庫)

雨の日はソファで散歩 (ちくま文庫)

  • 作者:種村 季弘
  • 発売日: 2010/07/07
  • メディア: 文庫
 

  横浜だと「根岸家」「泰華楼」に行った時の話が書いてある。どちらも今はない。「根岸家」はその流れを汲む店が東神奈川駅前にあるが、一念発起して途中下車した時には満員に近くて入れなかった。座れないことはなかったと思うが、常連さんが多い飲み屋というのはその雰囲気に割って入るのには多少勇気がいる。若葉町にあった「根岸家」は黒澤明監督の「天国と地獄」のロケで使われているそうである。種村さん曰く、「闇市的混沌」があり映画の舞台にもってこいだったそうだ。

 「泰華楼」は、野毛で商売している人に勧められて一度行った記憶があるが自信がない。看板が立派だったが中は結構庶民的だったような。ただ、豪華に見えた正面も種村さんによると改装後のものだそうである。この二つのエッセイは、産経新聞の神奈川版が初出のようだ。新刊を出した記念に編集者たちと一杯やり、一人2千円程度。「横浜が東京にあればよい」と思ったと書いてある。

 そのほか、豆腐に関するエッセイや書評など。種村さんって真鶴に住んでいたのか。怪談とか幻想文学とか自分の趣味とはややズレるなあと思っていたが、食のエッセイを読んでいるとその距離がぐっと近づいた感がある。恐々ながら、向こうの世界も覗いてみようかという気持ちになった。ちょっと気にしてみよう。