晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「春原さんのリコーダー」

 短歌集や俳句集を読みたくなることがある。なんか言葉の感性が鈍くなったなあと思う時(まあ、鈍いのだが)、長行を読むのがきつい時、別の視点で言えば、短くてもいいからグサッと刺さる言葉に触れたい時などに多い気がする。季節の変わり目にも、このような本を手に取りたくなる。

 東直子さんの「春原さんのリコーダー」。歌人であることは知っていたし、穂村弘さんとの共著も読んだことがある。そういえば単著は読んだことがない。第一歌集か。古本屋で購入したら、彼女のサイン入りだった。

 作風というべきか。実は、何を言っているのかわからない歌が多い。こちらの感性がついていってないと思っていたが、歌人・高野公彦さんもわからない歌が多いと書いているので少し安心した。正直、俵万智さんと比べると、圧倒的にわからない。

 しかし何だろう。字の並びというか、言葉の並び方が刺さるのである。不意をつくような言葉が刺激的なのだ。

毒舌のおとろえ知らぬ妹のすっとんきょうな寝姿よ 楡

 口元が緩みそうな歌だが、わからないと言えばわからない。最後の「楡」って何って?感じだ。

桜桃忌に姉はでかけてゆきましたフィンガーボウルに水を残して

太宰の墓にでも行く前にお清めをしたという事なのだろうか。ちなみにあとがきを読むと、東さんは身近な事を詠むのではなく、設定はフィクションが多いそうだ。

廃村を告げる活字に桃の皮ふれればにじみゆくばかり 来て

 代表作だそうだが、新聞の上で桃の皮をむいているのはわかる。この時にこの廃村に呼ばれているような気持ちになったのだろうか。うーん、わからん。でも、おもろい。

転居先不明の判を見つめつつ春原さんの吹くリコーダー

 来年、この歌にインスパイアされた映画が公開されるらしい。杉田脇士監督「春原さんのうた」。何かの縁だから、見に行こうかな。