晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「歩くひと 完全版」

 タイトルを見た途端に読みたくなった。そもそも谷口ジローさんの絵は好きだ。そんなによく知っているわけではないが、「孤独のグルメ」にははまっているし(ドラマも含めて)、「坊っちゃんの時代」も繰り返し読んだ。

 何がそんなにいいんだろうか。確かに絵は上手だが、そこまで写実的じゃない気がする。むしろ、あまり描き込まないようにしているようにも感じる。登場人物はちゃんと漫画らしい。そんなに「動き」のある漫画を描く人ではないと思っている。コマ割で見せる表情がどこか映画の一場面のように見えることがある。

 ウィキペディアによると、フランスやベルギーの作家の影響を受けているとか。あまり詳しくないのであまり触れないようにしよう。 

 一言で「静かな漫画」と言える。セリフも少ない。そりゃそうだろう。主人公はただ外にでる。妻との会話は多少あるが、メインはただ「歩いて出かける」、それだけだ。17話を収録。タイトルは、「鳥を見る」「いい湯だな」「桜の寝床」など。日常の延長というか、日常そのものと言っていいと思う。

 主人公の名前はわからないが、どうやら30歳から40歳あたりか。子どもはいないようだ。学校のプールに忍び込んだり、わざわざ路地に入ったり、雨に当たって帰ってみたり。そして、声を上げて階段を上ってみたりと、普段はやらないが、ふと誰でもやってしまいそうなことを、それとなく描いている。

 自分の「歩き」と重ね合わせる。歳をとるにつれて、花木に興味を持つようになった。なんかそのまま通り過ぎるのがもったいない気がして、そこにあるものを気にするようになった。というか、同じところをやたらと歩いたり走ったりしているので「変化」がわかるようになったというのが正しいか。鳥に関していえば、ウチの近くは、カラスと鳩以外は、ホオジロが多いだろうか。(検索する)いやいや、頰の白が大きいのはシジュウカラだそうだ。となると、第1話の内容とかなり近い。なんかうれしい。

 本のつくりもいい。完全版は税込み2750円と値が張るが、ページが平たくなるように綴じられているのがポイントが高い。

 東京都清瀬市の郷土博物館で「歩く、描く 谷口ジロー清瀬」という展覧会を開催している。ポスターは、この「歩くひと」から選んでいる様子。最寄り駅から清瀬は約1時間半。ちょっと行ってみようかな。