晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

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「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」

今年はミュージシャンの訃報が相次いだ。自分も歳を取ってきているので、若い時に親しんだ音楽家たちが、それ相応の年齢になってきているのはわかるが、「早い」「早すぎる」と感じさせる人が多かった。若いときに無茶していたのだろうか。 個人的には、坂本…

「橙書店にて」

週末には長い距離を走るぞと意気込みながら、当の週末にそんな気持ちが萎えている。いつものように早起きはしているのだが、WOWOWで映画を見てしまってもういい時間だ。ちょっと前に買った本でも読もうかと、読み出したら面白かった。 熊本の喫茶兼雑貨店と…

「翼 李箱作品集」

光文社古典新訳文庫から李箱(イ・サン)の作品集が刊行された。同文庫から韓国文学で出るのは初めて。近年、フェミニズムものを中心に韓国文学が多くの出版社から刊行されているが、やっと「大物が文庫になった」という感じだ。 韓国では、彼の名を冠した文…

「英語は10000時間でモノになる」

ランニング同様、英語も本を読んでギアを入れることがある。この「英語は10000時間でモノになる」は、ベンチャー企業の創業者から事業家・教育者に転身した橋本大也さんが自らの英語学習実践法を綴ったもの。普段目にする英語教育に携わる大学や予備校の先生…

「三春タイムズ」

小田原の「南十字」で購入した本。里心ってほどではないが、東日本大震災以降、福島県の浜通り中心だった関心が県全体、東北全般に広がった気がする。名前は知っているけどよく知らない町についての本。何かの縁だと思った。 磐越東線で郡山から二駅目にある…

「シャガールの馬」

虫明亜呂無さんの小説を読んだ。エッセイや評論を読んではいたのだが、小説も書いていて、1979年には直木賞候補にもなっている。「シャガールの馬」というこの短編集が対象だった。小説だけをかいているわけじゃないのか、1971年から78年までと比…

対談「私が読者になる時〈とき〉」西加奈子×村田沙耶香

生の小説家を見るのは久しぶり。有隣堂でチラシを見て無料イベントに応募したら、まだ先着250名の枠内だった。新宿の紀伊国屋ホールも想像したほど、大きなハコではなかった。落語会にはちょうどいいかも。紀伊国屋書店や有隣堂などの書店でつくる悠々会…

「懐かしい未来 ラダックから学ぶ」

「幻のユキヒョウ」を読んだのがきっかけ。「懐かしい未来」という題は、上白石萌音さんの歌にもあるようなので、あえて副題も記した。ラダックとはインド北部の地域で、インドながらチベット文化が色濃い地帯だ。ユキヒョウ姉妹さんのこの本によると、ユキ…

「老人と海」

言わずと知れた名作「老人と海」。世間的な評価を踏まえて「名作」と書いてはみたが、昔読んだときには名作だとはまったく思わなかった。「老人の独り言をずっと聞かされた」というのが、今回読むまでの印象だった。それ自体に間違いはない。 今回はふとした…

「幻のユキヒョウ」

去る10月23日は「世界ユキヒョウの日」だったそうな。ユキヒョウは世界に3千頭とか8千頭とか、ロシア発の記事だと1万頭とかと言われ、正確な数字がわからない。逆に言うと、それだけ調査が進んでいないとも言える。なんてたって中央ユーラシアの高地…

「むらさきのスカートの女」

今村夏子「むらさきのスカートの女」を読んだ。彼女の本はこれで4冊目。もしかしたら、ファンなのかもしれない。この作品は芥川賞受賞作で、これまで読んだ3冊に比べると、ぐっと読みやすい。頭の中にスイスイ入っていく感じである。書いた本人はそんなに…

「むしろ幻想が明快なのである」

虫明亜呂無という書き手をご存じだろうか。名前からして印象的だが、その文章も名前に負けないインパクトがある。まとまった文章を読んだのは、玉木正之さん編集の文庫本を古本で手に入れた時で、たぶん15年ほど前が最初かと思う。こんな美しい文章を書く…

「文学こそ最高の教養である」後編

では、後編。英米文学、ロシア文学とその他(日本、アフリカ、ギリシア)からだ。普段、自分は「ギリシャ」と表記するが、駒井稔「文学こそ最高の教養である」と光文社古典新訳文庫に沿って、この項では「ギリシア」にする。 前編のフランスとドイツでは、ど…

「文学こそ最高の教養である」前編

仰々しいタイトルに気圧されて敬遠していたのだが、kindleunlimitedで無料だったので(月会費は払っているが)読んでみた。光文社古典新訳文庫の編集者の駒井稔さんが、各翻訳者に話を聞くという体裁になっていて、いわばプロモーションイベントを活字化した…

「カレーライスと餃子ライス」

タイトルにつられた。「カレーライスと餃子ライス」の題が、平野甲賀さんの書体で書かれている。「日本語の外へ」もそうだったが、いかにも晶文社の本って姿である。日本のカレーは、縦横無尽というか変幻自在というか、いろんな形がある。具によっていろい…

「左川ちか詩集」

書肆侃侃房から刊行された「左川ちか全集」は気になる存在だった。左川ちかさんって、知らないし、読んだ事もない。しかし帯には、「萩原朔太郎や西脇順三郎に激賞された現代詩の先駆者」とある。となると、好きなタイプの詩人のはず、とは思っていたが、知…

「死刑について」

作家・平野啓一郎さんによる、死刑廃止についての講演をまとめたもの。講演会は、大阪弁護士会主催。平野さんは死刑廃止派。書いている自分は死刑廃止の主張に理解を示しているが、自分が被害者側に立たされた時にそのスタンスを維持できるか自信がない。こ…

「一私小説書きの日乗」

NHKの番組(再放送)を見ていて、ついポチッと押してしまった。昨年、死去した西村賢太さんの生き様を紹介した番組だった。ちょうど日記作品を紹介していて、kindleでは安価だった事から購入した。西村作品を読んだのは初めてだが、敬遠してきたわけではない…

「サウナ語辞典」

こんな本を読んでいる暇はないのだが、手に取って読んでみるとエピソードが面白いし、イラストもいい。紙も軽くて、触った感じがいい。ランニング後に寄る銭湯にはサウナ付きも多い。たぶん月に3、4回は入っていると思う。中規模以上の銭湯だと、サウナが…

「サキの忘れ物」

シーズン最終日を迎える国内2部リーグ22チームのファンを描いた「ディス・イズ・ザ・デイ」を積読のままに、津村記久子さんの本が文庫化されたので買ってしまった。エッセイなどは読んでいるが、津村作品を読むのは初めてだ。ちなみに「ディス・イズ~」…

本屋「南十字」

遅ればせながら、5月のブックマーケットで話を聞いた書店に行ってみた。小田原の「南十字」。5日間JRに乗れる「青春18キップ」を有効期限内に使ってしまおうと思ったのが体を動かしたメインの理由だが、以前から一度小田原でゆっくりと時間を過ごした…

「英語の極意」

NHKのラジオ講座でおなじみだった杉田敏さんの本。AIの発達と代用によって、言語そのものを学ぶ意義は薄れてくるかもしれないが、背景にある文化を学ぶ必要はでてくると主張。そうすることによって、AIではできないような(いつか追いつき抜かれるかもし…

「古本道場」

道場主の岡崎武志さんの指令の下、弟子の角田光代さんが古本屋を巡って、古書を探すという一種の古本及び読書ガイド。指令は、「鎌倉の古本屋に行って、鎌倉ゆかりの作家の本を探す」「早稲田で(角田さんの)青春時代の本を探す」といった感じだ。 岡崎武志…

「君たちはどう生きるか」

現在公開中の映画ではなく、吉野源三郎著の書籍について。タイトルがあまりに説教じみているので、手に取る気にならなかったのだが、映画化されたことで読んでみることになった。映画化といっても、妻によると、原作とは似ても似つかないらしい。ネットでも…

「おいしいアンソロジー ビール」

それこそカード会社の思うつぼなのだろうが、クレジットカードで物を購入する時に、一定の金額を超えるように品数を増やしたりすることがある。コンビニでのカード決済も当たり前になり、数百円でもカードで払うのに慣れてきたのに、やや立派な店舗だと、変…

「キリスト教の核心をよむ 学びのきほん」

子どもの頃は「アーメン、そーめん」とかとバカにしていた記憶があるが、英語や世界史(特に西洋)を学ぶと、キリスト教に関する知識は無視できないものになった。それが、ここ15年くらいは、もっと知っておきたい存在になっていた。 たぶん、子どもをカト…

「検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?」

刺激的なタイトルだ。普通に考えれば、「良い側面」をアピールしていかないと政党が権力を取ることなどないだろう。歴史的に良し悪しを判断するとなると「誰の(利益の)ために」「何の目的で」「政策はうまくいったのか」などを突き詰めることが重要だ。こ…

「This is 江口寿史!!」

社会人になったあたりから漫画を読まなくなってきたが、新しい漫画について行けなくなっただけで、毛嫌いしているわけではない。漫画は好きだ。随分昔だが、月曜の朝の電車は「週刊少年ジャンプ」や「ビックコミック スピリッツ」を読む乗客で一杯だった。隙…

「恋愛中毒」

2021年に58歳で亡くなった山本文緒さん。彼女の小説を読んだことがなかったので、「新潮文庫の100冊」にある「自転しながら公転する」を読んでみようかと思ったが、kindle unlimitedに彼女の代表作が含まれていると知って、この「恋愛中毒」を読ん…

「日々是好日」

「にちにちこれこうじつ」と読むそうだ。「好日」は「こうにち」説もあるそうだが、著者が読み慣れた方をタイトルとした。昔、通ったことがある代々木ゼミナールが「日々是決戦」というスローガンを掲げていたのを思い出した。こちらは「日々」が「ひび」だ…