「月刊みすず」は、その名の通りみすず書房のPR誌という位置づけかと思う。ほかの出版社のPR誌に比べて値段は高いが、そもそも出版物そのものの値段も高い。「月刊みすず」の連載が、単行本として編まれることもあるので、エッセイなどはよく読んでいる。学術的になるとちょっと厳しい。
毎年1・2月の合併号として刊行されるのが「読書アンケート特集」だ。有識者に前年(今年の場合は2016年)に読んで、興味を感じた本を5点以内で紹介してもらう。本は古い本や再読した本でも構わない。やたらと書き込んでくる人もいれば、淡々と短くまとめる人もいる。専門分野のほかに読んでいる小説なんかが面白そうに思えたりもする。いわゆる硬い本が多いが、昨年もしくは近年の傾向が見えるようでそれなりに興味深い。数をかぞえたわけじゃないが、複数の人間が選んで目立った本を5点あげる。
「セカンドハンドの時代―― 「赤い国」を生きた人びと」
ノーベル文学賞受賞以来、岩波書店から続けざまに本が刊行されていて、アンケートにもほかの本をあげているひとがいた。この本は「ソ連後」に暮らす人々へのインタビュー。「チェルノブイリの祈り」くらいは読んでおくべきか。
「ひょうすべの国 植民人食い条約」
笙野頼子の最新刊。11月の刊行なのに、読んだ人が多い。小説は文庫で読むのが常なので、河出文庫?になるのを待つが、我慢できずに買っちゃうかも。現代社会への警告の書。現状で生まれるべくして生まれた本かも。
プリズン・ブック・クラブ--コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年
- 作者: アンウォームズリー,向井和美
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2016/08/30
- メディア: 単行本
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「プリズン・ブック・クラブ コリンズ・米刑務所読書会の一年」
この本は積読中。読書会によって、受刑者たちが人の意見に耳を傾け、贖罪を吐露し、なによりも読書の楽しみを知っていく。ボランティアとして読書会の運営に携わったジャーナリストのノンフィクション。早く読まないと。
「串田孫一 緑の色鉛筆」
これは5点の中で唯一読んだ本。科学と緩やかに結びつくようなエッセイ。この本もそうだが、平凡社のSTANDARD BOOKSシリーズ自体も素晴らしく、朝永振一郎の本を選んでいる人もいた。第二期も刊行するらしいが、このレベルを維持できるか。
「戦争まで 歴史を決めた交渉と日本の失敗」
これも積読。「それでも、日本人は「戦争」を選んだ」の続編という認識で購入した。学生向けの講義録。これは腰を据えて読まなければ。
その他、原武史が、日本語訳のない韓国の本を選んでいた。読めるのかな。千田善が選んだ木村元彦「徳は孤ならず」も、かつて彼のJリーグをテーマにしたノンフィクションシリーズを読んだ事があるので、興味深いところ。