2泊3日の京都旅行。最大の〝収穫〟はこの本に出会えたことだ。帰りに京都駅近くの Avantiというドン・キホーテやしまむらが入っているビルに入った。そこの書店コーナーに行くと、規模の割には岩波の棚が充実していた(ちなみに文春文庫も揃いがよかった)。岩波の本は買い取り制。だから単純に、揃えた本を単に返品できなかったのかもしれない。いずれにせよ「ここにあるかもしれない」と思って、この本を探し始めると、あったよあった小林恭二「短歌パラダイス」が。
この本をずいぶん前から探していた。常々思っていたわけでもなく、新書の揃いがいい書店や古本屋で、ふと頭に浮かび眺める程度だった。見つからなかった理由に、メインと副題を取り違えていたことがありそう。ここで見つかるとは思わなかった。いやあ、嬉しい。しかも新刊本である。
副題にある通り、有名歌人をそろえて歌合をした〝実況中継〟。まるで山田風太郎の忍者ものの 小説を読んでいるような対決が続く。短歌ものは、歌人が素人や著名人の添削したものをよく読むが、こちらは全員歌人である。道浦母都子、俵万智、穂村弘、永田和宏、河野裕子、小池光、岡井隆、東直子、田中槐、井辻朱美、水原紫苑、加藤治郎、三枝昂之、大滝和子、杉山美紀、吉川宏志、紀野恵、萩原裕幸、梅内美華子、奥村晃作が初日のメンバー。面子がすごいので全員の名前を書いてしまった。初日は二組に分けて、1対1の対決。判者は高橋睦郎。
指定されたテーマに沿って作歌し、それを同チームの歌人が討論でサポートし、相手側は出来を批判する。まるで、ディベートのようだ。最終的には判者が白黒つける。足を引っ張ったり、無理やり取り繕ったりと、やりとりが面白い。二日目は、名前を伏せて3チームで戦ったもの(初日で帰った人もいる)。こちらには岩波の編集者も加わっている。なかなか個性的な歌を披露してくれて、驚かされる。
この本は相当に面白いのだが、重版されていないようだ。購入した本は2012年に2刷。これだけ面白いのに何故?という気持ちになる。あまりの歌人の素の姿を見せてしまったため、その後の重版にストップをかけた歌人がいるのでは、と勘繰っている。
それはさておき、日本語は面白い。再認識させられた。小林氏の実況ぶりも見事である。もっと小説書いてよ。