晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「横浜ミステリー傑作選」

 伊勢佐木町に最近できた古本屋(昨年あたりか)で、河出文庫の「横浜ミステリー傑作選」を発見。迷わず購入した。残念ながら、店名は忘れてしまったが、小ぶりながら文庫・新書系の品ぞろえは悪くなかった。「鎌倉」の流れで早速読んでみた。

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アマゾンで書影が出ないので、現物の写真をアップ

 「横浜」は作家の面子としては「鎌倉」よりも豪華だ。三好徹、長部日出雄阿刀田高生島治郎大沢在昌日影丈吉、津村秀介、斎藤栄の各氏。かなり「昭和」な面々なので、存命なのは阿刀田、大沢の両氏くらいと思っていたが、ウィキペディアによると、三好、斎藤の両氏も存命とのこと。

 住んでいるのは横浜なので、鎌倉よりは親近感が湧くのだが、いかんせん似たような話が多い。8編あるが、話はほぼほぼ私立探偵もののハードボイルドタイプ。嫌いじゃないし、厳密には話も違うのだが(当たり前だけど)、こう続けて読むと、さすがに飽きる。新しい話に入っても既読感があるのだ。「鎌倉」の方は湘南や三浦も対象だったが、こちらは斎藤氏が前文で「(横浜は)大略、五つの地域に分かれ、まったく性格が異なっている」と書いている割には、編まれた短編は、中華街、元町、本牧とほぼ加賀町警察か山手警察署管内での出来事だ。

 ちょっと国際色豊かにしようとしたり、エキゾチックさをだそうとすれば、中華街あたりを舞台として使いたくなるのもわからなくもないが、編む側はもうちょっと散らしても良かったはずだ。

 収録作は、さきほどの作家の順番で、「天使の葬列」「蓬莱山に消えた……」「心の旅路」「死はひそやかに歩く」「感傷の街角」「赤い輪」「混血孤児」「三人のミス・ミナト」と続く。

 大沢氏の「感傷の街角」は第1回小説推理新人賞受賞作だそうで、あまり読まない作家だが、レアなものを読ませてもらった気がする。人捜しを頼まれるが、行った先には死体があったという失踪人捜しの話。

 斎藤氏の「三人のミス・ミナト」も、地元のコンテストで優勝し、一日市長を任されたミス・ミナトと、一日助役の準ミス二人が来庁。その時に、重要書類がなくなった。そして、その後死人が…。市役所が舞台だなんて珍しいと思っていたが、斎藤氏は横浜市役所の勤務経験がある人だそうだ。

 三好氏も高校時代を横浜で過ごし、読売の記者時代も横浜で勤めていたらしい。直木賞も受賞している。作品は「天使シリーズ」もの。

 そろそろ長編の横浜ものを読みたい。となると、矢作俊彦の「ロング・グッドバイ」あたりか。