「本屋大賞」翻訳部門やら「このミス」の海外編でも1位だった「その女アレックス」など、いわばカミーユ・ヴェルーヴェン警部を主人公にした三部作の番外編というべきか、中編が残っているというのは「傷だらけのカミーユ」の解説に書いてあった。それがこの「わが母なるロージー」だ。
ピエール・ルメートルが書いた三部作はそれぞれ400ページを超えているが、これは約200ページの小説。話の流れとしては「悲しみのイレーヌ」「その女アレックス」「傷だらけのカミーユ」のうち、「アレックス」と「カミーユ」の間に入る作品で、文藝春秋のサイトによると2.5作目という位置づけになるようだ。
ほぼ冒頭と言える部分から爆弾を仕掛けた犯人が登場。死者こそいなかったものの、大規模と言える爆発だった。そして、犯人を青年が出頭してくる。カミーユと話したいというのだ。アンヌと食事の約束をしていたカミーユは仕事に戻る羽目になる。
犯人である青年が要求したのは、他に仕掛けた爆弾の情報と引き換えに、自分の恋人を殺して逮捕されている母親を釈放し、母子で大金とともにオーストラリアに出国させること。カミーユと交渉するにつれて、金額を下げることには応じるものの、爆弾のありかを口に出さない。爆弾の行方は。当局は条件を飲むのか――。
爆破事件からラストまでの3日間を、時間単位で進めていく。「一気読み必至」と書いてある。確かに、三部作よりは短いしテンポもいい。読みながら眉をひそめてしまいそうな残虐な描写も少ない。ランチや昼のみのようにサクッと、カミーユ・ヴェル―ヴェン警部との再会が楽しめる。三部作の感覚が残っているせいか、ちょっと物足りない気もなくはないのだが。
さて、これからのルメートルとの付き合い方をどうするか。そんなに数は出ていないが、ハヤカワで出ている分にも手を付けていくか、文春文庫で残っている、三部作とは別の「死のドレスを花婿に」を読むか。出たばかりの「監禁面接」が文庫になるのを待つか。ハヤカワが上下巻あることを考えると、「死のドレス」が手を付けやすいが。古本屋を眺めて考えよう。