晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「サド侯爵夫人・わが友ヒットラー」

 「焼け」がひどい文庫本を読んでしまおうと、三島由紀夫「サド侯爵夫人・わが友ヒットラー」を読み始めた。売っても値がつかないだろうが、他の本に混ぜて古本屋に出すつもりだ。三島の戯曲。読んでみると、えらく面白かった。特に「サド」の方は夢中になってしまった。三島氏は二つが「対をなす」作品と書いているが、こちらは「サド」の方に思い入れが強い。

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

サド侯爵夫人・わが友ヒットラー (新潮文庫)

  • 作者:三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/06
  • メディア: 文庫
 

  澁澤龍彦「サド侯爵の生涯」にインスパイアされたとのこと。監獄に囚われている間までは妻として寄り添っていたサド侯爵夫人(ルネ)が、夫が自由の身になった途端に離婚を決意した話を元に、三幕の戯曲とした。それぞれ、1772年秋、1778年晩夏、1790年春が舞台となっている。

 サド侯爵本人は出てこない。登場人物は、ルネと妹アンヌ、二人の母親であるモントルイユ夫人、家政婦のシャルロット。それにシミアーヌ男爵夫人とサン・フォン伯爵夫人。この二人はモントルイユ夫人の友人のようだ。この6人のやり取りの中で、サド侯爵の性癖というべきか語られる。いわゆる「サド」という言葉で連想させることをしているのである。それでいて、妹のアンヌとも関係を持っている。

 母親のモントルイユ夫人は別れることをすすめるが、ルネは夫は純粋なだけだと言って断る。しかしフランス革命が起きて、ルネの心情に変化が起きたか。それとも別の要因があるのか。夫が釈放されることになるとルネは修道院に入ることを決意するのだ。

 「わが友ヒットラー」は独裁政権誕生までの数日間を描いたもの。仲間だろうが敵だろうが容赦ない。これはヒットラーのイメージとかけ離れていないので受け入れられるやすい。

 久々にいい日本語を読んだって感じ。気持ちいい読書だった。