晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「ブンとフン」

 休校中の子供のために買った本。学校からの連絡で、おすすめという扱いだった。食いつきが悪いので、自分で読む。1970年の本なので、ネタにする芸人や感覚にのめりこめないのはわからなくもない。代わりにこちらが楽しんで読ませてもらった。この作品は、井上ひさし氏の初小説だということ。買った後に知ったが、今年は没後10年にあたるらしい。もうそんなに経つのか。ちなみにイラストは杉井ギサブロー。アニメ「タッチ」「ナイン」の監督・総監督で知られる。

ブンとフン (新潮文庫)
 

  ナンセンスものと称していいと思う。小説家のフン先生の作品から、抜け出したブンがシマウマの縞を盗んだり、奈良の大仏を鎌倉に運んだり、力士のまわしをとっちゃったりと大活躍(?)する話だ。すでに戯曲や放送作家としては活躍していて、劇「日本人のへそ」をしっかりと文中で宣伝している。この「ブンとフン」もアレンジされて演劇になっているそうである。どう舞台にしているのか、興味がある。

 童話のようで、童話でない。やや大人向けか。とはいえ、子供が読んじゃいけないって話ではない。文中にある「トルコ風呂」って何?と聞かれちゃうと説明に困るが、ついでにこの言葉が使われなくなった経緯を話すいい機会になるかもしれない。何が行われているのかを話すのは憚られるが…。

 井上ひさしってあまり読まなかった。高校時代に流行っていたのが「吉里吉里人」。しかし、やたらと長い本なので敬遠してしまった記憶がある。家には「一週間」もあるはず。これは単行本で買ったのがそのままある。そうそう、これは彼が亡くなった時にちょうど出ていた本だった。積読10年か。これもそろそろ読まないと。

 この「ブンとフン」。正直、粗い。でも、何か勢いを感じるのだ。200ページ程度の本だが、言葉遊びや社会風刺など、なんでも詰め込んで強引に封をしたような充足感みたいなものがあるのだ。無理やり読ませるわけにはいかないが、子供に手に取ってもらえる時もあるかもしれない。考えてみれば、自分だって50過ぎて初めて読んだのだから。