晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「恋する伊勢物語」

 ランドマークプラザの5階から2階に移ったくまざわ書店。大幅な規模縮小は残念だが、それでも残っているだけありがたい。久々にみなとみらい方面に行って、くまざわ書店の棚で目にしてしまった、俵万智「恋する伊勢物語」。なんとなく購入してしまった。

 たぶんNHKラジオで聞いた「古典精読」の「更級日記」が理由である。聞き逃しで寝ながら聞いていたので内容はあやふやだが、「伊勢物語で詠われていたけど武蔵野ってそれほどたいしたところじゃないわね」といった部分が頭に残っていた。そういえば、伊勢物語ってどんな話だったっけ。じゃ、買っていこうかって流れになったのだろう。よく覚えていない。

恋する伊勢物語 (ちくま文庫)

恋する伊勢物語 (ちくま文庫)

  • 作者:俵 万智
  • 発売日: 1995/09/01
  • メディア: 文庫
 

 全125段をきっちり解説してくれるわけではないが、脱線しつつもツボを押さえてくれるので、メリハリが効いている。ン十年前にこれを読んでいれば、古文に対する態度も変わっていただろう。原文の和歌を現代風に作り直してくれたものもあるので、これまた接しやすい。大まかに理解するにはこのような本を読むに限る。

 23段のいわゆる「筒井筒」。落語でもじったものを聞いた記憶がある。筒井が、丸く掘った井戸で、井筒がその地上部分を囲ったもの。なかなか日本語は面白くできている。9段、82段も有名どころ。当時から多様な恋愛パターンがあり、当事者なら身を焦がすような思いもあるかもしれないが、古典となって読むとなると、なんていうか、目を細めて読むしかない。

 伊勢物語という題の由来も諸説あるそうで、作者が「伊勢」という名前だった説、伊勢の国(三重県北部)に関連している説、伊が女性、勢が男性を表す男女の物語という説、えせ(似非)がなまった説、「伊勢斎宮」が登場する話があるという説があり、これは69段。源氏物語に「在五が物語」として登場するものも伊勢物語とされている。ここらは知っている人は知っているだろうが、個人的に備忘録として記しておきたい。

 高校生の頃の俵さんは演劇部に所属していたが、外国の長編ものの苦手だったそうで、読書自慢?としての対抗馬が、日本の古典だったそうである。岩波文庫の黄色で短めのを選んでは、「罪と罰」などに、「梁塵秘抄」や「方丈記」というカードで応戦したとのこと。本人は、あとがきで「不純な動機」と書いているが、それでもなかなかできることではない。俵さんには、「愛する源氏物語」という本もある。こちらも読んでみたい。