晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「人生最後のご馳走」

 ホスピスとは終末期のケアを行うところ。ここにお世話になるレベルだと、症状によっては食べられるものが限られてくるし、それこそ体が食事を受け付けないことだってあろうかと思う。大阪の淀川キリスト教病院の緩和治療内科・ホスピスでは、毎週土曜は患者の意向に沿って、夕食をリクエスト食として提供している。2012年に、ホスピス・子どもホスピス病院として開院したが17年に閉院となり、機能は淀川キリスト教病院内に残っている。

 この本は、ライターの青山ゆみこさんがリクエストされた料理を軸に患者やその家族、医療スタッフに聞き取りをした記録である。患者は末期のがんを患っている人。それぞれの患者を取り上げた章の始めには、美味しいそうな料理の写真とともに、患者の名前(仮名もあり)と年齢と病名が記してある。シュールと言えなくもない。通常の文庫本よりは写真が映える上質の紙に、「Dancyu」や「暮しの手帖」のような盛り付けがキレイな料理の写真が載って、そこに直腸がんやら膵臓がんやら書かれているのだ。

人生最後のご馳走 (幻冬舎文庫)

人生最後のご馳走 (幻冬舎文庫)

 

  しかしながら、たとえ週一でも、好きなものや美味しいものを食べるというのは、患者に力を与えるようだ。病院食と言ったら、あまり期待できない食事の代名詞のようだが、ここでは、調理に携わる人もしっかりと話を聞いて作るようである。患者たちはリクエスト料理を楽しみに週末を待つ。中には、元気を取り戻して、退院する人までいたというから、良いこととはいえ、ちょっと本末転倒という気がしないでもない。その後、亡くなったようだが。

 誰しも、食の思い出はあるものだ。リクエスト食に人生を投影している。オーダーした料理をもとに自分の人生を振り返っていく。自分なら、何を頼むのだろうか。読んでいて、そんな発想につながるのは珍しいことではないだろう。患者のみなさんが頼んだものは、寿司やすきやき、天ぷら、ステーキなど、ベタと言えばベタだが、案外、そのようなところに落ち着くものなのかもしれない。

 食事は当然予算オーバー。厚生労働省の食事療養費の制度内で実施されているが、超過分は病院の持ち出しとなっている。医療保険が適用されるので、一般の病棟と同程度で済むらしい。特に、富裕層のためのものではないということだ。ならば、こういうところがいいじゃん。神奈川にもこのような施設があるのだろうか。

 でも、リクエスト食とはいえ、ビールやお銚子を1本つけて、とまではいかないのだろう。酒と一緒なら、リクエストの幅がぐんと広がる気がするのだが。食べることもいいのだが、楽しみながら料理を選ぶってところに、プラス効果があるのかもしれない。いろいろ考えて、結局、炭水化物系に行くのかも。