晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「ヨコハマメリー」

 有隣堂伊勢佐木町本店に行ったら、中村高寛ヨコハマメリー 白塗りの老娼はどこへいったのか」が、1、2階を合わせてワゴンに100冊くらい積んであった。1階のレジ付近や文庫・新書コーナーがある2階には、よく横浜関連本が並べてあるが、えらい気合の入れようである。なんてったってメリーさんの本拠地の一つともいえる伊勢佐木町だ。盛り上げないわけにはいくまい。檀原照和「白い孤影 ヨコハマメリー」も同じワゴン内に数冊あった。

  中村高寛さんは映画監督。2006年に「ヨコハマメリー」で映画監督としてデビューしている。この本は、同作品の製作ノート的なものでもあるが、それ自体がノンフィクションとして読ませる力がある。神奈川出身のせいか、「地の利」を存分に生かしている。永登元次郎さん、平岡正明さん、五大路子さん、山崎洋子さん、名前は知らなかったが、メリーさんの写真集を出している森日出夫さん、など。一人のライターが地道にメリーさんを追う檀原さんの本に比べると、文は中村さんの手に依るものとはいえ、こちらはちょっと「連合軍」といった感じがする。特に、森さんのメリーさんの写真はインパクトがある。単行本で読んだ方が良かったかもしれない。永登さん所蔵のメリーさんの写真は、スクープ写真と言っていいほど(個人の感想だが)。これは買って確認してほしい。

 横浜の文化人が執筆していたタウン誌「ハマ野毛」が懐かしい。少なくとも4号までは買った記憶がある。性格的に廃刊までつきあったはずだが、どうなのだろう。新山下を離れる時に処分してしまった。自分が横浜に来た時期は、東急の桜木町駅がなくなるという話がでていて実際にそうなるのだが、野毛に危機感があった時期だった。よく行っていた村田家の方が、かつて隆盛を誇った根岸家にもいたというのも、グッときたエピソードだ。横浜の歴史というか中区の歴史にも存分に触れていて、なんか嬉しい本なのである。ジャック&ベティで映画をみた帰りでも、黄金町やかつて根岸家があった場所や、福富町などをぶらついてみようかという気にさせられた本である。関内あたりをぶらついて、時折メリーさんに出くわしていた頃が、ちょうと20~30代で、今考えてみると、一番楽しい時期だったかもしれない。バブル景気とその余熱が残っていた時代だったからだとも思うが。