晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「星の子」

 女優の芦田愛菜さんが、この小説が原作となる映画の主演を演じるという。その映画の完成イベントを扱った番組では、映画そのものの内容よりも、芦田さんのイベントでの発言に焦点を当てていた。親目線で見ると「いい育ち方」をしている印象だ。勝手ながら、ファンというほどでもないが読書家の俳優さんに対しては好印象を持っている。原作を書いた、昨年、芥川賞を受賞した今村夏子さんも気になっていた作家である。文庫にもなっている。早速読んでみた。

星の子 (朝日文庫)

星の子 (朝日文庫)

 

  芦田さんが演じるのが、主人公のちひろ。小さいころに体が弱くて、父親が会社の人に勧められたのが「水」。その水で体を拭くと、発疹が収まり体調も良くなった。両親は、それをきっかけに、水の提供元である宗教団体にぐっとのめり込む。ちひろはその団体の一員として成長していくが、両親ほど傾倒しているわけではないようだ。団体というよりは、両親についていっているというべきかもしれない。

 学校でもそのことはクラスメートや保護者たちに知れ渡っている。そのせいか、友人は少ない。ちひろ本人にとっても、その方が楽なようだ。さらりと書いているので分かりにくいが、ちひろの両親の傾倒は生活も圧迫しているようで経済的にも楽とは言えないようだ。当然、親族たちは心配している。団体からの奪還に失敗し、両親とは絶縁に近い。法事などに顔を出すのはちひろの役目だ。

 姉は、ちひろが小学生の時に家を出る。それも淡々と受け止めているようである。それなりに恋心を抱く相手もいる。両親とは仲が良く、母親にはそれについての「報告」もなされている。ある時、学校の先生が好きになっていたちひろは、卒業文集の制作を手伝って遅くなり、級友たちとともにその先生に送ってもらうことになった。送った先で先生が不審者と見た人たちは——。

 映画ではたぶん団体の名前をつけたりと、小説よりはもっと具体的なつくりをすると思う。小説は、なんとなく「薄口」でメリハリがない感じだ。そのせいなのか、スイスイと読めてしまう。ミステリーが好きなせいか、姉の家出などいくつかある伏線が回収されるはずと思って読み進めながら、いつの間にか終わってしまった。鈍いせいかもしれないが、作家が伝えたいことがおぼろげながら分かった気になったのは、読み終わって5分後くらい。

 文庫版巻末の対談相手が小川洋子さんというのは、なんかピッタリな気がしている。