晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

映画「ヨコハマメリー」

 順番は映画が先なんだろうけど、監督である中村高寛ヨコハマメリー 白塗りの老娼はどこへいったのか」を読んだので、映画も見に行った。本の文庫化をきっかけに、横浜シネマリン、シネマ・ジャック&ベティでリレー上映が始まった。平日を狙っていったが、結構な込み具合だ。おさえた席の横に人が座っていたので、互いにチケットを見直す。コロナ禍でどうやら一つ空けて座らせるのは、もう終わったらしい。しかし皆さん、メリーさんが気になる存在だったのだね。

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伊勢佐木町にある映画「ヨコハマメリー」のポスター

 書籍の内容の方が濃いので、筋についてあまり語ってもしょうがないのかもしれない。しかし、永登元次郎さんの歌声、メリーさんの姿や声を目の当たりにすると、やはり映像って説得力があると実感する。いろいろの人の証言がコンパクトにまとまっており、概略を簡単に知るには映画の方がおススメである。横浜市や中区の歴史を振り返る内容にもなっている。映画を見て歩いていると、ここは古本屋だったなとか、ここはレコード店だったなと伊勢佐木町の昔の情景が浮かんできた。

 永登さんについては、シャンソンの唱法についてはよく知らないけど、抑制が効いたやさしい歌い方だったんだなと。一度、生で聴きたかった。メリーさんをリサイタルに招待するなんてなかなか素敵だし、メリーさんもしっかり花束を用意していた。施されるだけというのは嫌なタイプだったんでしょう。他の証言でもプライドが高いとか言われていた。海外からの興行があった場合、当たるかどうかの目安が、メリーさんが見に来るかどうかだったというのは初めて知った。結構目利きだったようだ。手紙の文章もかなりきっちりしている。

 映画のクライマックスは、永登さんが横浜を離れたメリーさんがいる施設を慰問して歌を歌うシーンだろう。そこでメイクをしていないメリーさんの顔が映し出される。がんに侵された永登さんの歌を、メリーさんはうなづきながら聴いている。イメージで言うと藤村志保のような雰囲気を持っていた(個人の感想です)。公演が終わってすでにこの世にいない二人が寄り添って歩くシーンには少し泣きそうになった。