晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「アレックスと私」

 英語の悪口で、bird brain という表現がある。「馬鹿」とか「あほ」に値する言葉なのだが、pea brain という言い方と同様に、要は脳みそが小さいとそれだけ頭も悪いだろうという解釈から生じた言葉らしい。非常にシンプルな悪口である。

 とはいえ、オウムはマネとはいえ結構話すし、カラスも相当に賢いと言われている。カラスに至っては何か見透かされているような気持ちにさせられる。ごみ収集所から食べ物を得る方法などは、迷惑ながらもなかなか合理的と感心させられる時もある。

  2007年、米国の有力紙ニューヨーク・タイムズに、あるヨウムの死亡記事が載った。"Alex, a Parrot Who Had a Way With Words, Dies"という題で、色や形状を認識し、かつ100語以上の言葉(英語)を習得した、おそらく世界で最も有名な「話す」鳥が亡くなったと伝えた。Parrot はオウムやインコと訳されるが、正確には、African Gray parrot は、日本語ではヨウムである。オウム目インコ科に属するので、自分でも見た感じでは違いがわからない。

 この本は、アレックスと名付けられたヨウムと、著者である研究者アイリーン・M・ペパーバーグの「交流」を描いたノンフィクションだ。アレックス(Alex)は、avian language(learning) experiment の略だそうである。研究ありきの名前のようだ。

 研究対象として知能の高い動物を探していた筆者は、このヨウムに出会う。しかし、研究分野として弱いので予算がでなかったり、それなりの待遇の職を得られなかったりする。「収入につながる研究」をしないことが原因で、夫と別れることにもなる(それでもペパーバーグ姓を名乗っているのは、論文などの発表の一貫性のためだろうか)。

 しかし、アレックスは能力を発揮していく。50の物体の名前、7つの色、5つの形、8つまでの数を学習して人気者となる。自分が間違った時は「アイム・ソーリー」と言うこともある(申し訳ないという気持ちはなさそうだが)。造語を作ることもあった。

 筆者にもヨウムにそのような潜在能力があるのか、もしくはアレックスが特別な存在だったのかはわからないようだ。しかし、同時に飼った(研究対象とした)ヨウムにはここまでの認知能力は見られなかったようである。

 研究者が偶然、アレックスのようなヨウムに出会ったとなればそれはそれでロマンティックな話である。ランニング中にカラスによく出くわす自分は、鳥の能力というのをそれとなく信じている方だ。