晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「銀河の片隅で科学夜話」

 「明晰でわかりやすく、面白くて抒情的」と太めの帯には、大森望さんの紹介が書いてある。確かに、著者の全卓樹(ぜん・たくじゅ)さんの文章はかなりロマンティックで、こんなように科学の事を咀嚼して話せればカッコいいなと思う。しかし、なかなかこちらの頭がついていかない。何がわかったかはっきり言えないが、いい本を読んだって感触だけが残っている(笑)。

  人に話したくなるけど、カンペがあってもきちんと話せないようなネタばかり22話が収録されている。冒頭の話題から引っ張ってくると、1日の長さは1日あたり0.000017秒ずつのびているらしい。満ち引き潮で海水と海底が摩擦して、微妙に地球の回転を遅らせているとのこと。月も年に3・8センチずつ遠ざかっている。

 9億年前は1日は20時間ほどと推測されるそうだ。計算によると、これから500億年経つと、1日は今の45日ほどになり、地球から遠ざかった月は太陽より小さく見えるそうで、皆既日食を見ることはない。環境問題で自分の子どもの時代の気温を想像することはあっても、こんな先のことに思いをはせることはない。となると1年がそのまま365日だとすると、いまの換算では1年で体は45歳になってしまうのか(計算あってる?)。論語に例えると1年も経たないうちに、心構えは「不惑」になってしまうのかと思ったりする。しかしながら、その前に太陽が月や地球を呑み込んでしまうそうである。

 22話は、それぞれ天空編、原子編、数理社会編、倫理編、生命編と分かれている。原子と数理は苦手だが、倫理や生命となると、なんとなく身近な気がしてくる。わかったとは言えないまでも、いい導きになっているようで弱い分野ながら興味がひかれる。美しいイラストと巻末の参考文献も嬉しい。まさしく秋の夜長にぴったりな、ぜいたくな一冊。