晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「辺境メシ」

 好きな作家の高野秀行さんの本がまた文庫になった。いろんな「秘境」を旅してきた高野さんが、食をテーマにこれまで食べてきた「珍食」「奇食」を集めた本。副題の「ヤバそうだから食べてみた」の通り、なかなか強烈なものがある。本人の旅だけではなく、妻である作家の片野ゆかさんについていたものあるそうだ。すべてではなく、著者が味を覚えている料理(中には料理とは思えないものもある)から選んだとのこと。

  しょっぱなのゴリラやチンパンジーから引いた。おいおい、ヒトの仲間じゃないかよ。ゴリラはいかにも筋肉質でかたそうだ。世界自然保護基金WWF)でも、アフリカ現地の人々の食生活を考慮しながら、保護活動をしているとのころだ。一応、現地的にはOKなんだね、食べても。

 読んでいくと、昆虫食なんて当たり前に思えてくる。その昔、「世界まるごとHOWマッチ」で見てのけぞったメンダ―(タガメ)なんてサラッと書いてあるだけだ。当方、大人になって食の幅は広がったと思っているが、子どものころに食べられなかった野菜などを食べるようになっただけだ。それでもイナゴには抵抗があるし、納豆も好んで食べないほどである。自分の子どもには、大人になったら虫を当たり前に食べる時代が来るよと脅しているが、長生きしちゃうと「体にいいから」などと子どもに食べさせられる時が来るのだろうか。抵抗あるなあ。

 あまり想像しないようにして読んでいた。ヒキガエルのジュースも驚いたが、人の胎盤というのはさすがに恐れ入った。中国人は「四本足ならテーブル以外何でも食べる」とは聞いたことがあったし、口にしたこともある。本に書いてあった、その前段部分の「二本足ならお父さんとお母さん以外」というのは知らなかった。しかしまあ、胎盤まで食べるとは何たることか。漢方には、胎盤を乾燥させた「紫河車」(しかしゃ)と言って疲労回復に効く薬があるそうである。胎盤は水餃子にして食べるそうだが、当然表向きでは手に入らない。誰かが子どもを産まないかぎり、しかも横流ししないと人の口に入ることはないのである。高野さんはどうしても食べたいと言って、手に入れるのである。しかし中国の人は、「犬や猫の胎盤でも入手が難しい」と言っているということはそれらも食べるということであろう。ちなみに味はレバーに近いそうである。こんなのを読むと、ジェンダーなんてちいさい問題と思えてきた(そういう話じゃないのはわかっているが)。

 本の中に唯一自分も食べたことがある料理があった。韓国料理のホンオ(エイ)である。日本人が外国人に納豆を食べさせたがるのと一緒で、韓国人もこれを食べさせたがる。鼻はもちろん目も痛くなりそうなアンモニア臭。くさや同様、口にしてしまえばそれほどではないのだが、昔の便所(トイレって感じではない)のような臭いが刺さるのだ。それでもマッコリと一緒だと何とか食べられた。ただ、積極的に食べたいとは思わない。フードポルノの気がある自分だが、この本によって食欲に刺激を受けることはなかった。