晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「港の人」

 まぎらわしいが、「港の人」という鎌倉の出版社が出した「港の人」という題の詩集を買った。昨年末に買った、田村隆一さんの本が「港の人」から出版されたものだった。その後、ねじめ正一荒地の恋」にぶち当たり、そこで北村太郎さんという詩人の存在がより大きくなった。「荒地の恋」は北村さんと田村隆一さんの妻との間の出来事をもとにした小説である。そもそも1988年に思潮社から出た北村太郎さんの詩集「港の人」が、北村さんの晩年を世話した人によって再刊された。

港の人 付単行本未収録詩

港の人 付単行本未収録詩

  • 作者:北村 太郎
  • 発売日: 2017/09/22
  • メディア: 単行本
 

  北村さんは晩年に多発性骨髄腫を患い、92年に亡くなった。この詩集は最後から2番目にあたる詩集だそうだ。読売文学賞を受賞している。

 門外漢なりに一読して思ったのは、繊細、真面目な人だなという印象。朝日新聞社に勤務していたときには校閲をしていたそうだ。なんかうなづける気がしている。新聞社勤務中は詩作に専念できなかったらしいが、定年を一年残して辞めた後から創作がぐんと増えている。「荒地の恋」には田村和子さんとの恋愛が創作において刺激になったように書かれている。

黄が緑にちかいように

死は

どこまで生にちかくて

 

きょうは一日

風がつよく吹いて

しかも

ひっきりなしに向きが変わり

 

倉庫、ホテル、ガントリークレーン

税関、県庁

どこにある旗もめまぐるしく揺れつづけていて

……(略)

  田村隆一さんや谷川俊太郎さんの詩のように、グサッと来るような決めの言葉はほぼないが、なんかじわっとくる。そんな言葉やフレーズを思いついても、自分らしくないと照れながら打ち消してしまっているのでは。と勝手な想像をしてしまう。

 ここのところ、古書店をめぐっているのだが、なかなか北村太郎さんの昔の詩集が見つからない。最近、絶筆となった「センチメンタル・ジャーニー ある詩人の生涯」が文庫化された。もうちょっと、この詩人について知りたい。そしてかつて住んでいたあたりにもランニングついでに行ってみようと思っている。当時のアパートはもう残っていないらしいが、詩人が好んだ風景を近い視点で見てみたい。