晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「日本のいちばん長い日」

 半藤一利さんが1月12日に亡くなった。さほど熱心な読者ではなかったが、これまで気になる本や記事は読んできた。半藤さんの歴史へのアプローチは信頼できると踏んで、日本の近代史に関しては、かなり「受け売り」をしている。映画にもなっているし、内容も割と頭に残っているが、あえて「日本のいちばん長い日」を読んでみた。忘れていた部分があったのも理由だが、十分再読に耐えられる本である。戦争とは別物とはいえ、国の運命を決めるトップの判断という視点では現状と似ている部分もあるように思えた。

  改めて書くまでもないことだろうが、1945年8月14日の正午から翌15日の正午までを1時間刻みで、終戦決定に至るプロセスとそれを受け入れられない軍部の動きを、多くの人の証言をもとに組み立てた本だ。内容はわかっているつもりでも、なぜか緊迫感は伝わってくる。

 ポツダム宣言受諾の決定、天皇玉音放送、徹底抗戦に固執する陸軍と一部の〝反乱〟。証言者は「嘘をつく」という前提のもと、複数の証言から裏を取っている。確証に至らなかった部分は、注釈で説明をしている。別な証言があるが、こちらが有力だと思うと言った書き方で。SNSで言葉の上っ面だけが飛び交う時代だと、なんか新鮮である。

 この本は刊行時に大宅壮一編となっていたが、その後、戦後50年に際して、半藤さんを著者に「決定版」として再刊された。詳しい事情は知らないが、刊行当時は編集者でもあり、大宅さんの名前を冠した方が売れるという見方があったのだろう。社を退いたこともあり、半藤さんのもとに戻ってきた。

 また、半藤さんはその後に公開された「昭和天皇実録」を読んで、昭和天皇と軍部との相克があり、自分の解釈の一部を変更する必要があるとも考えていたそうである。玉音放送は軍人に対して敗戦を納得させるためのものだったのことだ。

 歳をとると、どうも歴史ものが楽しくなる。新しい本を読めないのは惜しいが、まだまだ半藤さんの著作には楽しませてもらうつもりである。合掌。