晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「おばちゃんたちのいるところ」

 知り合いから面白いという評判を聞いて購入した。いやいや満足しました。途中から、落語をモチーフにした作品があるのは気づいていたけど、17作品すべてが落語のほかに民話などから発想を得ていたとは。収録2篇目は「牡丹柄の灯籠」というタイトルだし、新三郎さんは出てくるし、中村主水の妻と嫁みたいな上品だかどうかわからない幽霊が「押し売り」に来たりと妙に楽しい。

  帯には、英米で好評だと書かれている。文庫の副題に、Where The Wild Ladies Areと書いてあり、これが英訳本のタイトルでもある。文庫本を買っているので、単行本で刊行されたときからこの副題があるのか、英語圏の読者の好反応から英語の副題を改めてつけたのかは不明である。松田さんは、英文科出てるし、翻訳家でもあるので、このくらいの英題は自分でもつけられそうである。

 表題作である「おばちゃんたちがいるところ」は、モーリス・センダックの絵本「かいじゅうたちのいるところ」からタイトルをいただき、落語の「反魂香」を題材としたもの。これらのかけ合わせも楽しい。その他、恋人に会いたい一心で放火した八百屋お七や、「一枚、二枚~」の番町皿屋敷のお菊の話などが見事にアレンジされている。

 アマゾンの英訳本の評で、「幽霊が出てきているのに、なぜ平然としているのか理解できない」といった海外の人の評が上がっていたが、日本人というのは時に幽霊や妖怪とも共生できちゃうことがあるというのは、外国の方にはわかりづらいのかもしれない。いい本でした。