食に関するエッセイ「酒味酒菜」を読んで、草野心平さんの詩集そのものが読みたくなった。岩波文庫で持っていたはずだが、積読の山に隠れて見つからない。ハルキ文庫から、同名の本が出ているのは知っていたので、ダブりは多いだろうが、そちらを買って読むことにした。本を読んで感動や感心はやたらとする方だが、なんというか、軽い衝撃を受けた。世間的に福島県出身の偉人の1番手は野口英世だと思うのだが、この本を読んで、草野心平の存在がむくむくと大きくなった。
植物や昆虫などを愛でる詩人は多いが、あくまで人として自然の美しさや力に心を動かされて詩を紡ぐ形だ。それに対して草野さんは、自然と同目線というか同化している気がする。言葉もすごくストレートというか、オープンだ。詩人なので、狙っているところもあるとは思うのだが、なんか開けっぴろげの感情をそのまま字にしたように思うのだ。
蛙についての詩も面白い。「ごびらっふの独白」というのは蛙語の詩である(日本語訳もついている)。曲もついていて、合唱でも歌われるらしい。全然知らなかった。草野心平さんについてもよく知らなかっただけで、新鮮に受け止めているだけかもしれないが、もうちょっとこの詩人について知りたいと思った。コロナのせいでタイミングを逸しているのだが、次に帰省する時は道草して、いわき市の草野心平記念文学館に寄ってみよう。