晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「土葬の村」

 日本で火葬される割合はほぼ100パーセントだそうである。これまで半世紀ほど生きてきたが、火葬以外で葬られたケースに出くわしたことはない。しかし日本だって昔は土葬だった時代があり、その風習が残っていたっておかしくはない。むしろ火葬が禁止されていた時代すらあった。筆者の高橋繁行さんはルポライターで高橋葬祭研究所を主宰しているらしい。この本は、おそらく現存する(した?)最後の土葬の村の記録だそうだ。

土葬の村 (講談社現代新書)

土葬の村 (講談社現代新書)

 

  2005年の時点で、火葬率は99.8%。著者が調査したところ、東北や九州の奥地でも残っていなかったが、奈良や京都に土葬の習慣を残す場所があったらしい。2017年には、奈良で90歳の男性が土葬された。弔い方はローカルルールというべきか、場所によって異なるようだ。ただ土に埋めるというだけではなく、樽のような縦の棺に座るように入れられたり、野辺送りのように村民が動員されたりすることもある。この本は、そのような土葬の風習も記録している。屍の野焼きや風葬についても書かれている。

 しかし日本で土葬が禁じられているわけではない。感染症で亡くなった人は土葬できないらしいが。今は、土葬を推し進める市民グループもあるらしい。「人間は土に還る」という考えを持つ人が多いそうだ。メンバーは若い人も少なくないとのこと。

 火葬も「火加減」が大事だそうだ。あまり火が強いままだと、骨もあまり残らないらしい。野で死体を焼く、野焼きは髪の毛が焼けて体に火が移るタイミングで水を含ませたむしろをかけるらしい。これも高温で骨がバラバラになるのを防ぐために、適度に温度を下げて「蒸し焼き」にするらしいのだ。なんか料理にも応用できそうだ。

 外国の葬送事情も紹介しているが、日本という国の多様性も感じさせられる。実にいろいろな「送り方」があるものだ。父親の葬式を思い出した。隣組の言うがままに喪主を務めたのだが、「もしかして、どっきりカメラ?」と思うような格好をさせられた記憶がある(書きたくない)。わざわざ実家まで来てくれた上司にはその後、写真を撮っておけばよかったと笑われたが、スマホ全盛の今なら撮られていたかもしれない。