いまごろなんだが、古本屋で急にこの本に呼ばれた気がした。30年ほど前に友人から薦められた記憶があったが、当時は趣味じゃないと思ってやり過ごしていた。ここ10年くらいはクラシックギターのCDもよく買うようになったし、家にいる時間が長いせいかラ・リーガもやたら見るようになったせいか、昇格したばかりのカディスというチームがいわゆる二強から金星をあげたことも頭にあった。文庫版でも上下巻合わせて1000ページほどだが、1日1冊のペースで2日で読まされてしまった。
そういえば、直木賞作品でもあった。実質的なデビュー作と言うべきかもしれない。持ち込み原稿としてはあまりの原稿の長さに、別作品でプロデビューして、この作品を出してもらうための下地を作ったようだ。確かに、やや盛り込みすぎな作品のようにも感じる。初校は1977年に書き上げていたが、刊行は86年だ。
1975年。漆田はフリーのPRマン。お得意先の楽器会社から、スペインのギター製作者ラモスの来日イベントを任される。ラモスと通訳代わりの孫娘フローラが来日。ラモスから日本人ギタリストの別名サントスを捜してほしいと依頼されて、漆田が動き出す。しかし、フローラは別な目的で動いているらしい。反フランコで日本の左翼組織と接触し先に帰国する。サントスのほかに幻のギターの存在も明らかになり、手掛かりを得るために漆田はスペインに飛ぶ――。
実質的なデビュー作だけあって、仕掛けがたくさん。正直、詰め込みすぎとも思ったが、とにかく読ませるのだ。最後まで一気に付き合わされてしまった。最後は最後で伏線の回収の仕方がえげつない。
逢坂剛という作家に接したのは初めて。スペインへの興味が出てきているところなので、同国が舞台になる作品はもうちょっと読みたい。次はもうちょっとシンプルでスキッとした作品がいいかな。それとも、西島秀俊主演でドラマ化しているシリーズに向かうか。