晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「日本ミステリー小説史 黒岩涙香から松本清張へ」

 日本はミステリー大国だそうだ。他に読める言語が英語と韓国語しかないので、よその国の充実度はわからないけど、たぶん間違っていないと思う。ミステリ―は欧米から入ってきたものだが、翻訳や翻案の過程で独自の広がりを見せた。家にいる時間が長くなり、二時間ドラマの再放送をついつい見てしまう自分がいる。ほとんどが小説が原作のドラマだ。

  日本オリジナルという意味でのミステリーと言うべきかそれに代わるものとして読まれていたのが、「大岡政談」だそうだ。いわゆる裁判ものだが、そんな要素があったのだろう。「大岡越前」を見たかぎりでは納得するところだ。

 翻訳はともかく日本人が初めてミステリーを創作したのは黒岩涙香。「萬朝報」を立ち上げた人で、ミステリーの翻訳を連載していたそうだ。当時は、「探偵小説」と呼ばれ、部数増に大きく貢献した。そしてとうとう自ら創作することに。しかし、この「無惨」という小説は「論理的過ぎた」ために当時の読者にはまったく受けなかった。

 明治時代にミステリーブームが起きるが、不遇の時代も経験し、「新青年」が創刊されるとまた盛りかえす。ここらは、神奈川近代文学館での展示「永遠に「新青年」なるもの」をたまたま見ていたので、いい復習になった。この雑誌は、横溝正史などが編集長を務めた。ちなみにこの展示を見た後、文学館で小栗虫太郎黒死館殺人事件」を買ってしまった。いずれ読む日が来るだろう。

 横溝正史金田一耕助は、石坂浩二が最初に演じたものだと思い込んでいたが、その前に片岡千恵蔵高倉健中尾彬などが演じていたらしい。中尾彬にいたってはジーンズ姿だったとのこと。そして、石坂浩二古谷一行で原作に近いイメージに戻る。西田敏行が演じたのもあったが、個人的にはどうしても石坂による金田一がしっくりくる。

 しかしまあ、こういうことも調べている人もいるのだなあと、著者の堀啓子さんには感心する。新聞小説についての著書があるらしい。結構、ニッチなところをついてくる。個人的には、掘り出し物。