晴走雨読 横鎌日記

気ままな読書と無理しないランニングについて綴ります。横浜と鎌倉を中心に映画やお出かけもあり。ここのところ、行動範囲が限られています

「センス・オブ・ワンダー」

 レイチェル・カーソンの遺作「センス・オブ・ワンダー」が文庫になった。以前、単行本を買おうと思っていた時期もあったので迷わず購入した。カーソンと言えば、殺虫剤や農薬に使われたDDTの危険性を訴えた「沈黙の春」が有名。今なら、「環境問題」というワードで連想される人間のはグレタ・トゥンベリさんだろうが、数十年前は、カーソンだったと思う。

 しかしながら、告発の書であった「沈黙の春」に比べると、この「センス・オブ・ワンダー」はずっと優しいエッセーなのだ。もっと書き込むはずだったのが、レイチェルの命の炎が先に潰えてしまったらしい。甥のロジャーに自然の神秘や発見の喜びを伝えるような内容になっている。鳥の声や木々の音、雨などの天候の変化に感性をとがらせ、自然の動きをそのまま受け入れるような。

 本編だけじゃ短いのか、福岡伸一若松英輔大隅典子、角野栄子4人のエッセーも収録。これも読みごたえがある。上遠恵子さんの訳と川内倫子さんの写真も良いアクセント。そして、字が大きさにも助けられた気がした。昔なら、氷だらけのハイボールみたいに損した気持ちになったはずなのに、年取ったなあと自覚させられた。ちょっとした時間の合間にいいと思う。